二十二話:Fate〈運命〉
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世界が来ることはない。でも―――奇跡は起こらない」
自嘲と諦めと憎しみを込めた言葉が波に呑まれて消えていく。
もしも、世界を変える奇跡があったのなら全てを捨ててそれを求めただろう。
でも、そんなものなど、どこにもなかった。
だから、理想と真逆の行いで世界を平和にしようとした。
奇跡がこの世に存在するのなら衛宮切嗣という人間の人生は全て間違いだった証明されるだろう。
「こんな……こんな悲しい終わり方であなたは良いんですか!?」
「良いか悪いかじゃない。正しいか、正しくないかだ」
「そういうことを聞いているんじゃないんです! あなたははやてちゃんが居なくなって本当にいいのかって聞いているんです!?」
なのはのどこまでも真っすぐな、理屈など関係ない言葉に切嗣の眉がピクリと動く。
どこかしら捻くれた、子供のような若い心を持つ彼にとっては理屈よりも純粋な感情の方が届きやすい。
そんなことなど、なのはは知らないだろうがなおも言葉を続けていく。
「私、そんなに頭が良くないから分からないことが一杯あるんだけど。でも、あなたが誰かを好きで傷つける人じゃないと思います」
「何を……言っているんだ?」
「だって、あなたが闇の書を封印しようとしたのは誰かを守るためじゃないんですか?」
言葉が出なかった。切嗣は目の前の少女が何を言っているのかが理解できなかった。
この期に及び自分が誰かを守ろうとしている人間と思う人間がいるとは考えてもみなかった。
なのはは真っすぐな瞳で切嗣を見つめてくる。彼はその瞳が怖くて思わず逸らしてしまいそうになる。
「誰かを守るために封印しようとした。なら、どうして―――はやてちゃんとヴィータちゃん達も助けようとはしないんですか?」
―――助けようとはしない。
その言葉を聞いた瞬間に切嗣から余裕は失われた。
まるで、子供のように少女に対して敵意むき出しにする。
「高々数人のために世界を賭けるなんて愚かなことができるか…ッ」
「それでも諦めなかったら何か方法が見つかるかもしれない! みんなで笑い合える未来が掴めるかもしれない!」
「そんなことは不可能だ。どちらか片方しか救えはしない。両方救おうとすれば全てを失うだけだ」
客観的に見ればそれは大人が子供に当たり散らしている情けない光景だろう。
しかし、傍で見ていた者達からすれば何故かそれは子供と子供の喧嘩に見えるのだった。
「どうして、そんなに悲しいことばっかり考えるの!?」
「リスクが大きすぎる。夢や理想だけじゃ何も変えられない。それが子供には分からないッ」
「子供だよ、子供でいいよ! そんな悲しい顔で悲しいことしかできない大人になるぐらいなら子供のままでいいッ!」
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