二十二話:Fate〈運命〉
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「君を殺して―――世界を救うからだ…ッ!」
血を吐くような呟きとともに氷結の誘導弾が闇の書の意志に当たり、魔法が発動される。
彼女の体が分厚い氷に覆われていきその身を永遠の眠りへと誘う。
なんという皮肉だろうか。彼女は自身を殺すべきか迷う父の背中を押してしまったのだ。
そして父は背中を押されたことで全てを、家族すらも捨てる決意を固めてしまった。
正しいかどうかも分からぬ傲慢な正義へと足を踏み出してしまったのだ。
動かぬ体となった娘を見つめる彼の表情は目の前の氷塊よりも硬く凍り付いていた。
「そん…な。はやて……ちゃん」
「嘘……だよね?」
文字通り、冷たい現実に打ちのめされた表情を見せるなのはとフェイト。
クロノは間に合わなかった自分に怒りを向けるように唇を噛みしめ血を滲ませる。
そんな子供達の様子を何とも言えない表情で見つめながらアリアは寂しげに笑う。
結局、切嗣は家族ではなく名も知らぬ他人を選んだのだと。
「……最後の仕上げだ、クロノ・ハラオウン。アリアの拘束を解け」
「…ッ。彼女にもう一度凍結魔法を使わせる気か?」
「ああ、理解が早くて助かるよ。僕のその場凌ぎの凍結魔法じゃ不安定だ。完璧を期すにはアリアに封印させるのが最善だ。それとも君がやってくれるかい? 君ならデュランダルを使えば可能なはずだ」
まるで幽霊のように生気を感じさせない瞳で近づいてくる切嗣にクロノは恐怖すら覚えた。
人間は理解できないものを恐れ、拒絶する生き物だ。
その人間の本質がクロノに警鐘を鳴らしていた。理解できないと。
娘として扱っていた人間を殺してもなお表情のない顔を持つ男。
はなから感情のない機械のように動ける人間がいることに恐怖した。
――常に冷静で居続けるのはただの機械だ。人の身で機械になることがないようにな――
思い出すのはグレアムの言葉。あの時は気づかなかったが今ならば分かる。
グレアムはあの男のようにはなるなと警告していたのだ。
「はやてちゃんのお父さん! これ、どうにかしてくださいッ!」
「悪いがそれはできない」
「どうして!?」
「凍結を解除してしまえば、すぐに闇の書の暴走が始まる。そんな危険な真似はできない」
身の危険も考えずに切嗣の元に飛んでいき食って掛かるなのは。
切嗣はそんな少女に理を解くようにどこまでも冷静に淡々と告げていく。
だが、少女がその程度のことで諦めるはずもない。
さらにそこにフェイトも加勢に入ってくる。
「私達が止めて見せます! 暴走なんてさせない…ッ。しても止めます!」
「戦ってみてあれに勝てると思うほど君達も馬鹿じゃないだろう? あれは規格外だ。君達だけの力じゃあ、どうしよう
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