二十二話:Fate〈運命〉
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チャーを闇の書の意志に向けて構えている。
ストレージデバイス、『トンプソン』の開発名『ピースメイカー』。
その名は切嗣が対人以外の戦闘を行う際に使うランチャーモードを使うためのキーとなっている。
スカリエッティが取り付けたふざけた設定。真名を解放しなければ真の力は発揮できない。
切嗣は自身が最大の破壊行為を行うときはいつもPeace makerという自身への最大級の皮肉を言わなければならないという苦痛を与える。
それ故、滅多に使うことはない。だが、今回はその限られた事例だ。
「『ローラン』装填完了」
放たれる誘導弾はグレアムに頼んで極稀にしかいない凍結変換の資質を持つ者の魔力を籠めさせた物。さらに、言えば相当な時間をかけて魔力を込めているのでその威力はアリアの行おうとした魔法『エターナルコフィン』にも魔力という点では劣らない。
そして、そのアリア自身が凍結強化の作用を持たせた魔法陣を書き込んだ誘導弾。
最後に切嗣自身がこの日までの間に長年積み重ねてきた温度変化の制御により、一発限定でエターナルコフィンに近い凍結魔法を切嗣が使うことを可能とする為の保険。
それが誘導弾『ローラン』である。
「さよなら、はやて」
「切嗣…! お前はどうして主を…ッ!」
――別にたいそうなもん用意せんでええよ。おとんと暮らせてる今で十分幸せやから――
明るく元気に、そして何よりも優しく育ったどこに出しても自慢な娘。
娘のどんな顔も完璧に思い出せる。笑った顔、怒った顔、泣いた顔……。
目に入れても痛くない。いや―――目に焼き付いて離れてくれない!
動悸がおかしくなる。奥歯がカチカチと鳴る。
それでも指先だけは揺れずに引き金を引いてしまった。
「やめろッ!」
「僕は……」
クロノが静止の声をかけるが時すでに遅し。
誘導弾は既に放たれ真っすぐに闇の書の意志の元に飛んでいく。
彼女は避けられないのか、それとも避ける気力すら残っていないのか、動かない。
――今年はもう泳ぐには遅くなりそうやしなー。来年みんなで海に行こうや――
自分よりもしっかりとしているが、偶にあどけない顔で甘えて来る。
そんな、何に変えても守ってやりたいと願ってしまった娘。
気が狂ってしまいそうだ。何もかも放り投げてあのミサイルを止めてしまいたい。
でも、目は決して逸らさずに悲しみの涙を流す顔を焼き付ける。
あの涙は闇の書の意志とはやての二人分の涙だから。
「僕は―――ッ!」
――大丈夫やよ。おとんは―――正義の味方になれるよ――
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