第二百三十一話 怪しげな茶その十
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「よいな」
「畏まりました」
「既に手は打ちじゃ」
そしてというのだ。
「その手を動かす手筈も整えておる」
「では」
「さて、来るかどうか」
信長は笑ってさえいた、今は。
「わからぬが来ればその時じゃ」
「これは後の先ですな」
後ろから兼続が言って来た。
「相手に仕掛けさせて」
「そこでな」
「こちらがその手をかわしてですな」
「逆の手を打つのじゃ」
「そうするのですな」
「そういうことじゃ、だから打たせる」
相手にその一手をというのだ。
「そうした勝負じゃ、よいな」
「では」
「うむ、入るぞ」
都にだ、そう話してだった。
信長は都に入った、都の者達は大路の左右にいて彼と信忠、そして一行を笑顔で迎えた。そうして言うのだった。
「天下様じゃな」
「うむ、いよいよじゃな」
「今回の上洛で決まるぞ」
「前右府様が将軍様じゃ」
「幕府が出来てな」
「そして太政大臣じゃ」
「大臣にもなられるぞ」
こう笑って話すのだった、しかし。
その彼等の中に暗い服の者達もいてだ、彼等は。
信長達を見てだ。素早く都の中に消えていっていた。幸村はその彼等を見て目を鋭くさせて信長に囁いた。
「殿」
「わかっておる」
「左様ですか」
「やはりおったな」
「はい、高田家に向かっています」
「そうか、あの家か」
「あの家はやはり」
「うむ、安土に戻った時に話すか」
その時にだ、しかし今はというのだ。
「その時ではない」
「では、ですな」
「朝廷とお話もするが」
「宿の本能寺の守りを」
「固めようぞ」
「畏まりました」
こう話してだ、そしてだった。
幸村は今は黙った、それは信長も同じで。
一行は本能寺に信忠達は二条城に入りだ。朝廷との話をはじめた。しかし信長の目的はそれだけではなかった。そのことはまだ誰にも気付かれていなかった。
第二百三十一話 完
2015・6・11
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