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とある星の力を使いし者
第157話
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何を考えているのか全く分からなくなってきた。

「お前の魂の復元は私の目的ではあるが、あくまで星を掌握するためのついでに過ぎない。
 最も最優先すべき事はある。
 この星の掌握などそのスタートに過ぎない。
 このクトルゥフの魔術や神話生物などそれを利用するための道具。
 私の目的はその先にあるのだよ。」

本能が警報を鳴らしている。
この男は今ここで殺しておかないとまずい事になる。
この星だけの問題ではなくなる。
自然と拳を握り締めていた。
腕や足や右胸は杭によって穴が空いているが能力で血流操作をしている為、出血による死はない。
全身に痛みが走るがそんなのは関係ない。

「貴方は危険よ。
 初代星の守護者として貴方を殺すわ。」

五メートルの距離など関係ない。
気がつけば目の前に移動して拳をバルドの顔面に向けて突き出す。
『麻生』が拳を振うがバルドの身体は虚空へ消え、拳は空を切る。
すると、空から無数の剣が降り注いでくる。
『麻生』は拳を空に突き上げると両手から蒼い光が円状に広がる。
それは盾となって、剣を妨げる。

「絶対貫通を想定したのだが、流石は星の力と言えるな。」

バルドはまた五メートル前に立っている。
手にはブリジットから手に入れたカーナックの書を持っている。

「お前に会えたのは嬉しい誤算だった。
 それだけで今日は来た意味はあった。」

バルドは背中を向ける。

「お前が存在するという事はまだ星の意思は存在しているという事。
 再び対策を考えねばな。」

その言葉を察するにこの場から離脱するのは明らかだった。

「逃がすと思う?」

「逃がさるを得ないさ。」

その時、バルドと『麻生』の間を埋めるように空から何かが舞い降りた。
その姿はゾウアザラシよりも大きい、太った白い蛆の様な姿で、半ばとぐろを巻く体の体節程の太さの尾を持つ。
体の前端の白い円板にある顔の中央には、開閉を繰り返す口裂が醜く開き、浅い鼻孔の上にある、左右迫った眼窩からは血の様に紅い玉が次々とこぼれ落ちている。
外宇宙からイイーキルスに乗ってやって来た異次元生物ルリム・シャイコースだ。
ルリム・シャイコースは大きく口を開ける。
舌打ちをして、『麻生』は左手を強く握りしめルリム・シャイコースの胴体に一撃を与える。
何かを叫ぼうとしたがタッチ差で『麻生』の一撃が早く、左手から莫大な星の力を注ぎ込まれ、内側から一気に破裂する。
その際に血の玉が舞い上がり、雨となって降り注ぐ。
全身が血で染まるが『麻生』は気にする様子は全くない。
バルドの姿はどこにもなかった。
あの一瞬でどこかに行ってしまったのだろう。
追い駆けたい衝動に駆られるが、自分の身体の傷を確認して息を吐く。


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