第157話
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ではなかった。
腰まで伸びた黒い髪を首の辺りで纏めてある。
服装は制服ではなく蒼いコートを着ていて複雑な紋章が描かれている。
手には黒の革のグローブがつけられている。
「えっ?」
思わず声が洩れる。
「どうしたの?」
桔梗が心配そうな声をかけてくる。
それに気をとられて『麻生』から視線を外す。
もう一度『麻生』の後ろ姿に視線を戻すとさっきとは違い『麻生』が歩いている。
混乱しそうになったが、桔梗が早く移動しようという言葉を聞いて考えを中断する。
車に乗り込み、愛穂を後部座席に寝かせるように乗せて桔梗が運転席に乗る。
制理は助手席に乗り、最後にサイドミラーで後ろを確認した。
そこには『麻生』ではなくさっきの黒い髪の人物が映っていた。
ゆっくりと近づく。
バルドとの距離はお互いに一〇メートルくらいだろうか。
未だに再会が嬉しいのかその言葉では言い表せない感情に身を委ねている。
『麻生』は声をかけることなく、一瞬で距離を詰めて左手を握り締めバルドに向けて一気に殴りにかかる
拳は地面に突き刺さり、その衝撃波は周囲のアスファルトにひびを入れる。
手応えはない。
「こちらが再開を噛み締めているのにいきなり殴りかかるとはな。」
声は前から聞こえた。
突き刺さった拳を抜き、前を見ると五メートル先にバルドが立っている。
「貴方相手に言葉とは必要だと思う?」
桔梗達と話していたような丁寧な口調はどこへ行ったのか、乱暴な言葉遣いで話す。
それがまた嬉しいのか笑顔を浮かべたまま言う。
「何十年ぶりの再会だ、お互いに祝おうではないか。」
「私は会いたくなかった。
貴方がそっち側に堕ちて行った姿なんて見たくなかった。」
「お前は何も知らない。
この数十年の私の苦しみも何もな。」
だが、と言葉を区切ってバルドは言葉を続ける。
「お前との再会は今のこの時まで待ち望んでいた。
あらゆる魔術を研究してお前の身体を完璧に構築させた。
しかし、魂だけは再現は出来なかった。
私の記憶を元に作ってもそれはユウナではない。
だからこそ、星から魂の情報を手に入れる必要があった。
まさか、お前の魂がその形のまま二代目にあったのは嬉しい誤算だったがな。」
「そんな事の為にこの子や関係のない人々を殺してきたのね。
ダゴン秘密教団だなんて組織も作って、本当にくだらないわ。」
心底呆れたような顔をする。
その時だった。
バルドは高らかに笑い出したのは。
「何が可笑しいのよ。」
「いやな、その身体に入っている間に頭の方が劣ってしまったのかと思ってな。」
「貴方、一体何を考えているの。」
何か不安を感じた。
この男は
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