第157話
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くるが必死に血を止めようとしている桔梗は気がつかない。
しゃがみ込んで、愛穂の肩に刺さっている杭を握り締める。
そこでようやく『麻生』の存在に気がつく。
「恭介・・・」
言葉をかけて『麻生』の顔を見た瞬間だった。
何か決定的な違和感を感じた。
そこにいるのは『麻生』である事に間違いはない。
なのにいつもの『麻生』とは全く別の雰囲気を感じる。
これは長年幼い頃から見ている桔梗だからこそ分かったのかも知れない。
肩に刺さっている杭を握り締めた『麻生』はそれを強引に引き抜いた。
それに生じた強烈な痛みに気絶していた愛穂の意識は目覚める。
そして、悲痛な叫び声をあげる。
「な、何をしているのよ!!」
正気とも思えない行動に愛穂は『麻生』に強く言い放つ。
それでも『麻生』は表情を変えずに言う。
「この杭があれば血を止める事ができません。」
声も『麻生』の声なのだが口調など何かが違う。
桔梗が疑問に思っていると、『麻生』は立ち上がる。
「血は止めました。
早くここから離れて下さい。
車はそこに用意しておきました。」
『麻生』が指差す方に視線を向けると、白い四人乗りのワゴン車があった。
最初にはなかった物だ。
麻生は言葉を続ける。
「冥土帰しの所に向かってください。
彼なら彼女のなくなった腕と足の代わりを作ってくれるはずです。
後、そこの女性も一緒に。」
呆然と濡れた路面に座っている制理の事を言う。
『麻生』は制理に近づきしゃがむ。
「しっかりしてください。」
肩に触れるとそこではっ、と意識が戻る。
あまりに常軌を逸した現象を前に本能が逃避していたのだろう。
「彼女達と一緒にあの車へ。」
それだけを言って立ち上がり、バルドの方に向かって歩き出す。
桔梗は愛穂の容体を考え、ここを離れる事にする。
だが、その前に聞きたい事があった。
「貴方、一体誰?
その子の身体を使って何をするつもり。」
その言葉を聞いて『麻生』は足を止める。
振り返り、少しだけ笑みを浮かべる。
その笑みも麻生ではない誰かの笑みのように見えた。
「私はユウナ。
この子の先輩といった所ですよ。
大丈夫、あの男を何とかしてからすぐにそちらに向かいますから。」
そう言って再び前を向きバルドの方に歩いて向かう。
まだ聞きたい事はあったが愛穂の苦しそうな声を聞いて断念する。
制理を呼んで愛穂を車まで運ぶのを手伝ってもらう。
現状を再び理解した制理は身体は自然と震えている。
この場から離れたい気持ちで一杯だったが、それでも『麻生』が心配になって視線を向ける。
『麻生』の後ろ姿を見た時、制理の視界に映ったのは麻生の姿
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