第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
ヒルゼン
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ルゼンセンセ!!! これで木ノ葉の里はもう終わり!! ああ、木ノ葉の風車も長く回りはしなかった、あっはっはっははは!! ちょっとの間つまらなくなるけれど……でも愉しかったですよ、センセ」
弟子だった男が狂った笑い声を上げる。爬虫類めいた瞳には狂気が宿り、その聞くも恐ろしい笑声は狂気そのもの。その姿を見たヒルゼンの瞳から涙が溢れ、目元を伝う。
「おろち……まる」
前は。もっとずっと、何十年も前は。
大蛇丸は大人しく、聡明な子だった。天才として回りからも一目を置かれた子で、その麗らかな外貌からも彼を好く女子は多く、自来也や綱手との仲も良好であった。好奇心が強く、知識への欲望が強い、ヒルゼンの可愛い弟子の一人だった。
それが狂いはじめたのはいつからだろう。その両親が死んだ後ぐらいだろうか。どんどんと変貌していくその姿。気づいていたはずなのに止められなかったその異変、その狂気。例え大蛇丸がその知識への欲望の為に狂気の沙汰に足を踏み入れるのが運命だったとしても、ヒルゼンは責めを感じずに居られなかった――狂気の沙汰に足を踏み入れていく彼を止めることが出来なかった罪悪感。
だからこそ彼が禁術の実験をしていることをしっても、手を下すことが出来なかった。弟子への愛しさとその狂気への罪悪感、その二つがヒルゼンの手を止めた。
でも。
「この、戯けがァアアあああ!!」
大蛇丸を思い切り蹴り飛ばす。猿魔の腕がその首を掴む。
今日こそ終わらせなければ。今日こそけじめをつけなければ。
弟子への愛しさとその狂気への罪悪感、それは言い訳でしかない。彼が禁術の実験をしていたのも自分がそんな彼に手を下さなかったのも、そしてその判断が今の木ノ葉に絶大な危機を及ぼしているのも事実。
あんなに幼い少年が戦っているのが見えなかったのか。きっと彼以外にも沢山の少年少女達が、そして沢山の上忍や中忍が、里を守る為に戦っている。火影たるヒルゼンを信じて、里の皆を信じて奮闘し続けている。なのに今自分がここで躊躇うわけにはいかない。
火影の名を背負ったその意義を忘れては、いけない。
「はああッ!」
猿魔の掴んでいた大蛇丸が土くれとなって崩れ落ちた。そこから現れた本物の大蛇丸を蹴り飛ばし、初代と先代の体に貼り付けていた札を発動させて、その体を爆破させる。二人が吹っ飛び、地面に倒れた。
だがやはり、穢土転生に縛られている魂をなんとかせねば意味はないようだった。塵芥が飛び交い、爆破されて欠落した部分を塵芥で埋めていく。爆破された部分を取り戻した二人がゆっくりと立ち上がり、地面に転がっていた大蛇丸も黒髪を揺らしながら立ち上がる。
「ならば、四代目の術を使うしかないか……!」
自らの命を代償に魂を封じる、あの術を。
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