第五章
[8]前話
「そこまで買うなんてな」
「普通はしないですか」
「とてもな」
「そうですか」
「ああ、そこまで買うんだったらな」
それこそというのだ。
「御前将来いい旦那になるよ」
「じゃあ」
「ああ、あれを買ってな」
そしてというのだ。
「婚約者の土産にしろ」
「そうします」
こうしてだ、カザルはそのクイラク、彼等の国であるウズベキスタンの民族衣装をズボンであるロジムと髪飾りも買ってだった。
オムールと一緒に意気揚々と駱駝達を連れて街を出た、そして砂漠を進みながら言うのだった。
「じゃあ後は帰りますか」
「砂漠を通ってな」
「けれどあれですね」
「あれって何だ?」
「はい、砂漠の中の街で着るからですね」
「クイラクのことか」
「はい、ロジムもですけれど」
彼がここで言うのは服のことだった、土産ものとして買った。
「だからああした風なんですね」
「生地は薄くてゆったりとしてな」
「砂とか熱気を考えて」
「それで夜は冷えるしな」
砂漠はそうである、乾燥地帯なので冷めやすく暑くなりやすい。それで夜になると昼とはうって変わってかなり冷え込むのだ。
「だからな」
「ああした服ですね」
「そして模様はな」
「よく他の国の人が独特って言いますね」
「太陽だの蠍だの入ってるよな」
「駱駝とか柘榴とか」
「砂漠とかオアシスにあるものをな」
そのウズベキスタンにだ。
「そこにあるものを入れてるんだよ」
「それでああした模様ですね」
「御前が買ったのは幾何学模様的だけれどな」
「そうしたクイラクもありますね」
「まあ水に映った雲だ」
オムールは笑ってこうも言った。
「御前が買ったクイラクはな」
「それってクイラクそのものですね」
ウズベク語、彼等の言葉でそうした意味だ。クイラクとはまさに水面に映った雲という意味だ。
「本当に」
「つまり御前は土産ものに雲を買ったんだよ」
「水に映ったですね」
カザルは師匠の言葉に笑って応えた。
「そう言うと何かロマンチックですね」
「そうだな」
オムールも笑って応えた、そうした話をしながら商品を全ていい値で売れたことにも満足しながらだ。二人で意気揚々と彼等の街に駱駝達と土産と共に戻った。そしてカザルは婚約者にプレゼントをして喜ばれオムールは妻と娘達に土産を渡した後博打の店に入り後で妻に怒られた。
クイラク 完
2015・11・27
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