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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
もしも 〜 其処に有る危機(6)
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必要とされる知識だ。仮になれなくてもその視点を持つ事は必要だと私は思う。上層部が何を考えてどういう方向に進もうとしているかを理解する。そうする事で今行われる戦いが如何いう意味を持つか、自分の行動が如何いう意味を持つかも理解出来る筈だ。そうでなければ君達は単なる戦争の道具になってしまう、使い捨てのね。私は君達にそうなって欲しくない」
胸がジーンとした。閣下は本当に僕達の事を考えてくれるんだ。ハルトマン、エッティンガーも頬が紅潮している。二人も僕と同じ気持ちに違いない。ハルトマンが一歩閣下に近付いた。
「閣下、自分は授業で五割増しの敵と戦うシミュレーションを行いました。そして負けました。実戦なら五十万人が戦死しています。僕は、いえ自分は臆病と言われるのが怖くて撤退出来なかったんです。自分は、自分は軍人に向いていないんでしょうか?」
ハルトマン……、俯いている。時々落ち込んでいたけどずっと悩んでいたのかな。エッティンガーも心配そうにハルトマンを見ている。さっきまで笑顔だったフィッツシモンズ少佐も笑みを消している。閣下はじっとハルトマンを見ていたけどフッと息を吐いた。
「シミュレーションは勝つ必要は無いんだ。負けても良いんだよ」
「でも」
「大事なのは状況を想定する事、その中で最善を尽くす事だ」
状況を想定? 最善? どういう事だろう、ハルトマンも顔を上げ訝しんでいる。閣下は僕達が納得していないと気付いたようだ、苦笑を浮かべている。
「例えばだが同じ兵力差でも退いて良い場合と戦わなければならない場合が有る。哨戒任務中の遭遇なら退いても構わない。しかし補給船団の護衛任務中で物資が届かなければ味方が大敗北を喫するとなれば物資を守るために不利を承知で戦わなければならない。例え自分の艦隊が敗北しても補給物資を守りそれによって味方が勝利を収められるならそれは意味の有る敗北だ。そうじゃないかな?」
ハルトマンが“はい”と答えると閣下が頷いた。
「状況を想定する事、その中で自分に何が求められているか、自分に何が出来るかをシミュレーションで確認する。それがシミュレーションの持つ意味だ。勝つ事ではないんだよ、ハルトマン候補生。シミュレーションの勝敗に拘らないと言っているのはその状況を想定して最善の行動が何なのかを確認しなさいという事なんだ」
「はい!」
ハルトマンが力強く頷いた。僕もエッティンガーも頷いた。校長閣下が僕達を見て優しく笑みを浮かべてくれた。
帝国暦487年 8月 15日 オーディン 士官学校 ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ
ヴァレンシュタイン中将は楽しそうに候補生達と話している。そして候補生達は中将を尊敬の眼差しで見ていた。溜息が出そう、外面だけは良いんだから……。あの卒業式以来ヴァレンシュタイ
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