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逆さの砂時計
この手を伸ばして
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この野郎。
 「ある程度近くに行かないと遠見もできないの。状況が判るまで、あまり物音を立てないで」
 「それ、遠見って言うのか?」
 「仕方ないでしょう。応用技を幾つ考えたって、実質殆ど無力なのよ。私は」
 「確かに。戦う時は邪魔になりそうだ」
 「にゃうぅ」
 「なんだよ」
 不満そうに俺を睨んだって、事実は事実だろうが。
 「黙って。次よ」
 一歩も動かない内に景色が二転三転してたかと思えば、最後に花弁の嵐が押し寄せて来た。
 四方八方見渡す限りのサクラの木。過去にも何度か見たが、これだけ密集してるのは初めてだ。マリアの記憶でもじっくりは見てなかったからな。
 なんつーか……うざい。びらびらびらびら落ちまくってんじゃねーよ! 邪魔!
 「みゅー……」
 「……。」
 「「「……。」」」
 ……なんだよそのジト目。
 情緒を理解しろとか言うなよ? 景観の美なんざ知ったこっちゃねーぞ、俺は!
 「はぁ」
 わざとらしく溜め息を吐くな鬱陶しい!
 「ん」
 ん? ……上?
 離れた子供マリアの左手人差し指が上空を指した。青い空に目を凝らせば、少し縦長な点が二つ。白い雲の間で付いたり離れたりしてる。
 あれか。
 「この距離なら聞こえないだろ。気配も消してるし」
 「一応、音は潜めて。相手はレゾネクトなのよ? 油断しちゃ駄目」
 言いながらじぃっと点を見上げる。
 ……コイツ今、フィレスの様子を遠見してんだよな。俺の目でも精々服の色が判る程度だが……何か腹立つな。
 「俺にも見せろ」
 「え? ちょ」
 棒立ちの子供マリアに口付けて、視界を一部俺に移す。
 ……なんだありゃ? 手のひら大のカード?
 「にゃうっ!」
 「ぃでッ!」
 ティーのボールみたいな体が突然、横から頭にぶつかってきた。
 衝撃が半端無い。一瞬目眩がした。
 「その質量で体当たりとか、何考えてんだデブドラ!」
 取っ捕まえようとしたら、今度は三精霊が目尻を吊り上げて一斉に俺の耳元で喚き出す。
 「アンタこそ聖天女様に何するのよ、この黒焦げ男! 最ッ低!!」
 「やっぱり悪魔は破壊とそれしか頭に無いのね! 女の敵よ! この汚物!!」
 「聖天女様を汚さないでよ、幼女趣味のケダモノ! 害虫!!」
 「ちょっと待てテメェら好き放題抜かすな! 俺は幼女趣味じゃねぇし人間としてのコイツの実年齢は」
 「ベゼドラ。煩い。」
 ひっ!?
 な、なんだ? 子供マリアが急に猛吹雪を背負った?
 何か知らんが……滅茶苦茶怖ぇ……ッ!
 「はぁ……ベゼドラは空間を繋いで様子を見たかっただけよ。大丈夫。それより、フィレス様に加勢して! レゾネクトを探ってるみたいだけど、このままじゃ危険だわ!」
 「にゃっ」
 子供マリアに
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