第五十一話 当主
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かねば……。コーヒーを一口飲んだ。
「確かに宇宙が統一されればオーディンでは統治に不便かもしれん。フェザーンに遷都という話も出るであろうな」
「そうなればわしも侯も地の利を失う」
「うむ」
その通りだ。我らが力を持っているのも妻が皇族という事、群を抜いた財力、武力の他に本拠地がオーディンに近いという事が有る。地の利を失えば徐々に衰退するだろう。帝都に近い方が繁栄はし易いのだ。影響力も発揮し易い。
「統一は何時頃と公は考えているのです?」
「内政に十年、その後五年で宇宙を統一すると言っていたな」
「では十五年後ですか……」
「先の事は分からんが、まあ一つの目安と思えば良かろう。早くなる可能性もある」
大公と話していた妻が溜息を吐いた。十五年か、となると遷都は遅くとも二十年以内には実現するだろう。但し、統一されればだ。
「ではブラウンシュバイク公爵家は辺境の開発に乗り出すのかな?」
「おそらくそういう事になるだろう。侯は如何する?」
皆の視線が私に集まった。妻と娘も私を見ている。
「……難しいな。惑星を一から開発するとなれば膨大な費用と年月がかかるだろう。上手く行くかという不安が有る。かといってこのままでは宇宙が統一された時、当家が徐々に衰退するのも確かだ。判断がつかん」
私が答えると大公はもっともだという様に何度か頷いた。
「今すぐ答えを出す必要は無いだろう、政府から正式に打診が来たわけでもないからな」
「うむ」
「一度エーリッヒと話してみては如何かな。あれはそれなりに成算が有るようだ」
「そうだな、話してみるか」
開発の事だけではなく内政の事、統一の事、この際突っ込んで話してみるのも悪くないだろう。
「ところで捕虜交換が済んだらブラウンシュバイク公爵家は皆で領地の視察に向かうつもりだ」
「ほう」
「カストロプ、ラパート、ブラウンシュバイク、ヴェスターラント、フォッケンハウゼン、ディーツェンバッハ、……十月に出発しオーディンに戻るのは年末になるだろう」
驚いた。大公は悪戯っぽい笑顔を見せている。大公だけではない、大公夫人、エリザベートも同じような笑みを浮かべていた。
「それは本当か?」
「本当だ」
思わず唸り声が出た。クリスティーネ、サビーネも目を丸くしている。
「エーリッヒは単なる顔見せで終わらせるつもりは無いらしい。自分なりに領地を把握したいようだ」
「なるほど」
身体が丈夫ではないと聞いたが随分と精力的だな。しかし三月もオーディンを留守にするのか。
「わしもカストロプ、ラパートがどうなったか興味が有る。改革派の目指す統治がどのようなものか……。当家にとっても参考になる部分が有るやもしれんからな」
そうか、改革派か、それが有ったな。確かに気になる。貴族も改革が始まって
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