第五十一話 当主
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す事は出来んかな」
「無理です、公は来年は今以上に忙しくなると見ています。大規模な視察が出来るのは今しかないだろうと」
アントンが拒否すると二人が溜息を吐いた。
「確かにその通りだ。已むを得んな、アンスバッハ准将」
「ああ、確かに来年は今以上に忙しくなる筈だ。已むを得ん」
「視察を楽しむ暇など有りませんな。エリザベート様も落胆なさるでしょう、楽しみにしていましたから」
アントンの言葉にシュトライト少将が首を横に振った。
「我慢して貰わなければならん。今回だけではないぞ、これからもだ。そうでなければ公の妻は務まらん」
アンスバッハ准将とアントンが頷いた。
「不思議ですな、公爵家の姫君に我慢しろと言うのですか。エリザベート様は皇孫でもあられるのに」
ちょっと意地の悪い質問だったか? だが三人は怒らなかった。
「シェーンコップ大佐、勘違いするな。大公閣下は既に隠居され公爵家の当主ではない。ブラウンシュバイク公爵家の当主は公爵閣下だ。そして公は帝国の軍、政、宮中においてなくてはならない御方、エリザベート様もその点についてはわきまえて頂かなくては……」
俺に説明すると言うよりは自らに言い聞かせるような口調だった。
「シュトライト少将の言う通りだ。公は養子、なればこそ我らは公を盛り立てなければならん。いかなる意味でも公の立場を揺るがす様な事は許されんのだ。エリザベート様でさえ公には遠慮なされる、周囲にはそう思われなければならん」
「なるほど」
シュトライト少将、アンスバッハ准将の言葉を聞いてリューネブルクの言った事を思い出した。この国では人間関係が重視される、皇孫が遠慮する、その意味は大きい。
「まあ多少は公もエリザベート様を気遣ってくれればと思うが……」
「難しいと思いますよ、そっちの方は不得手ですから期待は出来ません」
シュトライト少将の希望をアントンが無慈悲に打ち砕いた。皆が切なさそうな顔をしている。どうやら俺の出番か。多少は公にアドバイス出来るだろう。楽しみが出来たな。
帝国暦488年 6月 8日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム三世
「如何思うかな、リッテンハイム侯」
「いや、言っている事は分かる。しかしなんと言うか……、実感が湧かん」
「そうだろうな、わしも初めて聞いた時は同じだった。言っている事は分かるのだが実感が湧かん。想像が出来んのだな」
ブラウンシュバイク大公が私と同じ言葉を発した。
大公夫人とエリザベートは頷きクリスティーネとサビーネは呆然としている。ブラウンシュバイク公爵家の応接室で大公夫妻、エリザベート、私とクリスティーネ、サビーネでお茶を飲んでいるのだが話の奇抜さにお茶の味がよく分からん。少し落ち着
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