第五十一話 当主
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自由を感じる事も多いだろう、ヴァレリーは公がブラウンシュバイク公爵をさりげなく務めていると言っていたが……。
「私もフェザーン人を利用する事を考えましたがやはり難しいと言わざるを得ません。ですがあの方なら如何でしょう?」
アントンの言葉に二人が訝しげな顔をした。あの方? 誰だ?
「あの方? ……まさか、卿」
アンスバッハ准将が顔色を変えた。シュトライト少将も愕然としている。
「ならんぞ! フェルナー大佐。大体あの方を帝国内に入れる事は危険だ」
「帝国内に入れる事は考えていません。ですが情報だけでも……」
「駄目だ!」
シュトライト少将が憤然と遮った。
「あの方とはどなたなのです?」
俺が口を挿むと三人が俺を見た。幾分バツの悪そうな表情を見せたが直ぐに視線を逸らした。
「教えては頂けぬのですかな」
また三人がこちらを見たが今度は迷惑そうな顔をした。面白くなってきた、どうやら地雷を踏んだか。
「死人だ」
さて次はどうしたものかと思っているとアンスバッハ准将がボソッと答えた。相変らず視線は逸らしたままだ。それにしても死人? アントンを見たが無言だ、シュトライト少将も無言だ。そして二人とも俺と視線を合わせようとしない。死人か、妙な話だ、どうやら帝国には死人を使う技が有るらしい。或いは暗号名か、だとしたら洒落ているが。
「シェーンコップ大佐、これ以上詮索はするな」
「小官は知る必要は無いという事ですか、アンスバッハ准将」
幾分皮肉が入ったかもしれない。しかし准将は視線を逸らしたまま何の反応も見せなかった。
「そうだ、知らぬ方が良い。或いはいつか卿も思い当たる事が有るかもしれない。しかし死者を甦らす様な事はするな。大公も公もそんな事は望まぬ筈だ」
大公も公も? 二人も知っているという事か。だとすると余程の事だな。
「分かりました。詮索はしません」
俺が答えると三人が明らかに緊張を解いた。ま、詮索せずともいずれは分かるだろう。
「済まんな、シェーンコップ大佐。だが口に出来る事ではないのだ。これが表に漏れればとんでもないことになるのでな」
アンスバッハ准将の言葉に他の二人は無反応だ。否定ではないな、これ以上は触れたくないという事か。少しの沈黙の後、シュトライト少将が口を開いた。
「財務省はどうか?」
「財務省? 役人をブラウンシュバイク公爵家に出向させるのですか?」
アントンが問うとシュトライト少将が首を横に振った。
「いや、それなら閣下が直接ゲルラッハ子爵に頼んだ筈だ。フェルナー大佐に命じたという事は内密にという事だろう」
「では?」
「退官した人間を利用出来ないかと言っている」
アントンが“なるほど”と頷いた。
「しかし適当な人物がいますかな?」
俺が問い掛けると三人が心許なさそ
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