1部分:第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
第一章
悠久のインダス
「とんでもない国だよな」
「そう思いますか」
「ああ、思う」
彼は真顔でガイドに答えていた。彼、矢吹隼士は今インドにいる。
茶色の癖のある細い毛の髪を女の子の髪型で言うショートにしている。目は一重でアーモンド型で横にある。細面で唇は少し厚い。薄めの鱈子にも見える。背は一七六程で高いと言えばまあ高い。全体的にすらりとしている。
服はジーンズにシャツ、それにリュックという旅行者とすぐにわかる格好だ。彼はそのインドの人がやたらと多い町の中でこう言ったのである。
「だから何だよこの町」
「インドの町ですが」
「それはわかるけれどさ」
それでもだというのである。
「だから何でこんなに人が多いんだよ。中国より多いじゃないか」
「人口二十億ですから」
ガイドの言葉はとんでもないものだった。
「ですからこのニューデリーもです」
「二十億って。本じゃあ十一億ってあったよ」
「数字には多少の間違いがつきものです」
「十一億と二十億じゃあ全然違うだろ」
「些細な違いだと思いますが」
「全然違うよ。九億も違うじゃないか」
隼士は日本人の観点から語る。その彼の周りに子供達が群がってくる。そうしてそれぞれ様々な言葉で彼に言ってくるのである。
その子供達を見てだ。彼は怪訝な顔でガイドに尋ねた。ガイドもまた子供たちに囲まれている。それは群がるといった感じであった。
「この子達ってまさか」
「はい、物乞いです」
それだというのである。
「先祖代々、由緒正しい真面目な物乞いの子供達です」
「そういうカーストなんだよな」
「その通りです」
インドでは三千程度のカーストがあると言われている。それは代々受け継がれるもので物乞いのカーストも存在しているのだ。
「ですからここはです」
「ああ、わかったよ」
彼は早速財布を取り出した。それでコインを子供達に一枚ずつ与えるのだった。どれも空港で両替して手に入れたものである。
それを渡しながらだ。彼はガイドに言うのであった。ガイドは当然インド人である。浅黒い肌に彫の深い顔、それに口髭である。ターバンまでしている。誰がどう見てもインド人の格好で彼の横にいるのだ。
「これでいいんだよな」
「はい、これが彼等の仕事ですので」
「先祖代々の」
「そういうことです。それでは」
「行くんだよな、ホテルに」
「この通りをまっすぐです」
ガイドは前を指差す。しかしその道は。
人、人、人であった。道なぞ見えずいるのは人だけであった。
その道を見てだ。隼士はまた言った。
「道だよな」
「はい、道です」
「人だけで道が見えないんだけれどな」
「そうですか?」
「そうだよ。っていうか」
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ