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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十八話 可愛げの無い敵
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五艦隊が映っている。なるほど、敵の一個艦隊に押されている。状況は良くない。
「第十四、第十五は急造の艦隊だ。どうやら黒色槍騎兵の相手は荷が重いらしい」
司令長官が息を吐いた。せっかく決戦に持ち込んだのに状況は良くない、遣り切れない思いなのだろう。

「已むを得ませんな。外側から敵の一個艦隊が近付くのも見えます。第十一艦隊のアップルトン提督に第十四、第十五艦隊に協力するように伝えます」
「うむ、そうしてくれ」
これで正面は四個艦隊になった。帝国軍と同数だ。若干有利かと思ったが全くの互角、いや第十艦隊が酷く叩かれている事を思うとやや不利と言ったところか。帝国軍の別動隊が来るまでに勝負を付けなければならない、厳しい状況になった……。

「本当は一旦全軍で退いて陣を再編したいところだが……」
「それをやれば帝国軍はまた逃げるでしょう。それにもう時間が有りません」
司令長官が大きく息を吐いた。
「已むを得んな。……それにしても可愛げが無い、少しは不意を突かれて慌てるかと思ったのだが。……そうなればもう少し有利に戦えた……」
ビュコック司令長官がスクリーンを睨んだ。スクリーンには後退する同盟軍と猛然と追撃する帝国軍が映っていた。


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