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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十八話 可愛げの無い敵
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第十艦隊が後退を始めた。それに合わせて第十三艦隊も後退する。だが帝国軍が猛然と距離を詰め攻撃をしてきた。
「第十四、第十五艦隊、帝国軍と戦闘状態に入りました!」
オペレータが報告してきたが誰もそちらを確認する余裕が無い。それ程に正面の帝国軍の圧力が強い。第十艦隊は被害を出し続けている。そして第十三艦隊は第十艦隊との連携が取れず効果的な反撃が出来ずにいる。

「全く、可愛げが無いな」
驚いてヤン提督を見ると提督が私に気付いて小さく笑った。そして第十艦隊の混乱について教えてくれた。開戦時、帝国軍は三個艦隊、同盟軍は二個艦隊だった。そして帝国軍三個艦隊の最初の一撃は第十艦隊に集中したらしい。第十艦隊は三倍の兵力の敵を相手にしたのだ。

「第二撃からは二個艦隊が第十艦隊を攻撃し一個艦隊が我々を攻撃した。混乱した第十艦隊なら二個艦隊で十分と見たのだろう。そして我々を押さえるために一個艦隊に攻撃をさせた。野放しには出来ないからね」
「三個艦隊が……、ですが混乱が酷い様な気がしますが」
「そう、混乱が酷いのは帝国軍が狙点を統一しているからだ」
「狙点を統一?」
「帝国軍のレーザーは一点に集中した。その分だけ第十艦隊の損害は大きくなった」

慌ててスクリーンを見た。確かに第十艦隊への攻撃は一点に集中している。そこだけが爆発の光が激しい。溜息が出そうになった。ヤン提督も同じ攻撃法を使うけど数個艦隊で実践するとは……。ヤン提督が可愛げが無いというのも分かる。何とも手強い。
「全体の戦力は同盟軍の方が多い。だがここでは帝国軍の方が兵力が多かった。ヴァレンシュタイン元帥はそれを最大限に利用したよ。敵よりも多くの兵力を用い集中して使う。攻撃レベルでも実践するとは。まったく……」

同盟軍は決戦に持ち込んで喜んでいるけど決戦を一番喜んでいるのはヴァレンシュタイン元帥なのかもしれない。獰猛な獣が歓びに震えながら牙を剥いている、そう思った。



宇宙暦 799年 4月 16日  同盟軍総旗艦リオ・グランデ  ドワイト・グリーンヒル



「第十艦隊は随分と叩かれているな」
スクリーンを見るビュコック司令長官の声には溜息が混じっていた。司令長官を窘める事は出来ない、私も溜息を吐きたい気分だ。
「閣下、ウランフ提督の左に第三艦隊を置きたいと思いますが」
「そうだな、帝国軍の攻撃を少しは逸らせるだろう」
「残り二個艦隊はヤン提督の右に」
「うむ」

そうなれば前線の兵力は同盟軍が五個艦隊、帝国軍が四個艦隊、多少こちらが有利になる。
「いや、総参謀長、それは駄目だな」
「は?」
ビュコック司令長官が顔を顰めている。何か拙い事が有ったか?

「向こうが危ない」
司令長官がスクリーンの一角を顎で指した。そこには第十四艦隊と第十
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