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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十八話 可愛げの無い敵
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は後背は突けない! 何時の間に? 如何いう事だ? 艦橋が五月蠅い! 少し静かにしろ、考えがまとまらん。如何する? 退くか? 駄目だ、俺が引けばビッテンフェルトは敵中に孤立する。最悪の場合ヤン、或いはウランフに側背を突かれ潰滅するだろう。
「閣下!」
顔が強張っているぞ、ワルトハイム。想定外の事態など幾らでも有るだろう。落ち着け! ヴァレリーもだ、そんな顔を引き攣らせるな!
「レンネンカンプ、アイゼナッハ艦隊に連絡! 接近する敵艦隊を叩きます。速力上げ!」
「はっ」
俺の命令をワルトハイムがオペレータに伝える、艦橋からさっきまでの騒音が消えた。代わりに各艦隊に命令を伝える声と状況を報告する声が響いた。同盟軍は全軍がこちらに向かって来ているとオペレータが報告してきた。ここで決戦するつもりか! 切り替えろ、ここで決戦だ! 戸惑えば敵の勢いに飲み込まれる。ここで戦うんだ。これは俺の意志だ!
「反乱軍、速力を上げています! ビッテンフェルト艦隊が指示を求めています!」
如何する? ビッテンフェルトを下げて隊列を整えるか? ……駄目だ、下げれば同盟軍を勢いに乗らせてしまう。敵はこちらが後退すると見ている筈だ。ならば、踏み込んで戦うべきだ! 敵の意表を突け!
「現状にて敵艦隊を阻止せよ。ミュラー艦隊を支援に向ける、協力して敵艦隊を撃破せよ!」
「はっ」
舐めるなよ、こっちのビッテンフェルトは原作とは違う。逆撃に弱いヘタレじゃないんだ。黒色槍騎兵は帝国軍屈指の精鋭部隊という評価は伊達じゃない。
「ミュラー艦隊に命令! 迂回しつつ前方に出、ビッテンフェルト艦隊を外側より援護せよ。ケンプ艦隊はレンネンカンプ艦隊の左へ移動せよ、急げ!」
「はっ」
「統帥本部に連絡! 我、反乱軍と交戦中。この場にてメルカッツ副司令長官を待つ」
「はっ」
良し、艦橋が熱を持ってきた。ようやく落ち着いたな、戦う心構えが出来た。
「反乱軍、ビッテンフェルト艦隊に近付きます! 接触まで約二十分」
二十分、大丈夫だ。ビッテンフェルトなら対処出来る。ミュラーが援護出来るまでさらに約四十分はかかるだろう。問題無い、ビッテンフェルトとミュラー、攻勢と守勢、それぞれ帝国屈指の実力を持つ男達だ。彼らを信じるんだ。
「正面の反乱軍、イエローゾーンにさしかかります!」
オペレータの声が上擦っていた。ヤンもウランフも速い! もう迫ってきた! ビッテンフェルトよりもこっちの方が先に火蓋を切ることになりそうだ。余程に俺の首が欲しいらしい。背中にチリチリとした嫌なものが走った。上等だ、捻じ伏せろ! この首、簡単に獲れると思うな、これまで何度も狙われた首だが狙った奴は全員叩き潰してきた。お前達も返り討ちにしてやる。
「全艦隊に命令! 砲撃戦用意! 主砲斉射準備!」
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