第三章
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カザフスタンは首都と一部の都市以外には人は殆どいない、晴海は首都に戻って宿泊先のホテルでウィリアムにそのことを言った。
「広い国だけれど」
「人口は少ないよね」
「一六〇〇万人位ね」
「うん、日本と比べるとね」
「ずっと少ないわね」
「国土は日本よりずっと広いけれどね」
「だから人が少ないのね」
晴海は夫の言葉を聞いて納得した。
「そうなるのね」
「人口密度的にね」
「そうなのね」
「そう、ここはそうした国なんだ」
「遊牧民の国は大抵そうね」
「モンゴルでもそうだね」
ウィリアムはここでもこの国の名前を出した。
「あの国もね」
「ええ、国土は広いけれど」
「人口は少ないね」
「人は定住して農業や工業、漁業とか」
「そうしたものを営む人の方が多くなるから」
人類の歴史においてはそうだ、遊牧民は確かに存在するがどうしても少数派である。
「中央アジア自体が人口が少なくて」
「このカザフスタンも」
「国土は広いけれど人口は希薄なんだ」
「そうした場所なのね」
「だから気候的な難しさはあっても」
ここでだ、ウィリアムは笑ってこんなことを言った。
「土地はあるから宮殿を建てられるよ」
「あら、そう言うのね」
「カスピ海の東岸とかにね」
カザフスタン西部はこの巨大な湖と接している、それでこう言ったのである。
「建てられるよ」
「そうなのね」
「今僕達が住んでいるマンションから出て」
笑って話すウィリアムだった。
「そこにアラビアンナイトに出て来るみたいな宮殿はどうかな」
「けれどこの国にずっといたら」
晴海は笑って話す夫に微笑んでこう返した。
「お刺身も天麩羅も食べられないわよ」
「あっ、海がないから」
「それでもいいの?あなた大好物でしょ」
「紅茶とクッキーと並ぶね」
日本に来て和食の味を知ったのである。
「僕の大好物だよ」
「白い御飯もないわよ」
「パンがあっても」
「お味噌汁もね」
「それは困った、日本に来て病み付きになっているのに」
和食自体にである。
「そういったものがないとね」
「そうでしょ」
「うん、じゃあ日本にいるよ」
「それがいいわね」
「そうだね、結局は」
ウィリアムは晴海の言葉に頷いた、そしてだった。
そのうえでだ、こう言ったのだった。
「やっぱり日本にいよう、そして明日は」
「ええ、明日はこの首都の市場とかをね」
「巡ろう、食べるものもね」
それもというのだった。
「食べていこう」
「それもフィールドワークね」
「そうよ、そうしましょう」
こう話してだ、そしてだった。
次の日だ、ウィリアムは実際に晴海を首都アスタナの街に連れて行ってその場所をフィールドワークしていった。その中で。
市
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