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Element Magic Trinity
気づいてない。
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べていく。
想像力の高さは自他共に認めている。それがあってこその魔法であるし、それがなければ母の目を欺く変身など出来やしないのだから。

「……よし」

最後の一文字を書き終えて、ヴィーテルシアは暫し無言だった。
今なら、この手紙を知っているのは自分だけだ。なかった事にも出来る、破いてしまう事も出来る。新しい便箋を用意して、宛名を相棒の名前に変えて選ぶ先ごと変更してしまう事だって。
今なら、まだそれが出来る。後戻りも、そこから別の道を進む事も。何の手も打たないという選択だって、不可能なんかじゃない。
それをきちんと理解した上で、彼はそっと封をした。







思い出しても、あの選択は間違っていなかったと断言出来る。
母親や故郷、友人達への未練に似た思いはあった。今だってそれはあって、胸の奥底で疼いている。けれど、一匹狼に見えて誰もいないのを恐れる相棒を放っておく事も出来ない。そんな選択をしてしまえば、アザレアで暮らしながらもティアの身ばかり案じてしまいそうでもある。
結局のところ、ヴィーテルシアはティアの事が大好きで仕方ないのだ。放ってなんておけなくて、何度も何度も願ったあの頃よりも傍にいたいと思ってしまう。

「ヴィーテルシア?何笑ってるの、アルカみたいよ」

向かいで、不思議そうに首を傾げる。
無意識のうちに緩んでいた口元を隠そうとも直そうともせずに、ヴィーテルシアは「気にするな」と首を横に振った。

「何でもないんだ。……早く食べてしまおう、冷めると味が落ちる」
「?冷めてもアンタの料理は十分美味しいけど」
「!……ほ、褒めてくれるのか…!?」
「いや、そんなにキラキラした目で見られてもね…精々頭撫でるくらいなものよ?……って何でそんな嬉しそうになる訳?私が撫でてもご利益とかないんだけど…?」









心地よい陽だまりの中にいた。
窓の外はアザレアの街。ひくりと鼻を動かせばバターの香りがして、ふかふかとしたソファーに寝転がった体勢から身を起こす。

「リーシェ」

呼ばれて、反射的に反応する。すぐに自分はリーシェではなくヴィーテルシアだと遅れて思い出したが、振り返った動きは止められない。
振り返った先にいるのは、ロッキングチェアをゆらゆらと揺らす母親。

「……母さん」

リーシェと呼ばれている今なら、そう呼んでもいいかな。なんて。
ぽろりと落ちた声に、ソフィーはふわりと微笑んだ。その微笑みは相棒のそれとよく似ていて、一瞬2人の姿が重なりかけて、ふっと消える。
そんな微笑みを浮かべたまま、柔らかい声が紡ぐ。







「おかえりなさい、リーシェ。そして行ってらっしゃい、ヴィーテルシア」









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