1部分:第一章
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ていた。
「早智子ちゃんはあそこに」
「そっちの男の子も女の子もね。いえ」
けれどその人は早智子には違う顔を見せた。
「貴女はもうすぐこっちに来るかもね」
「もうすぐですか?」
「ええ、ひょっとしたら」
くすりと笑ってこう述べた。
「こっちに来るかもね。その時は」
今度は一樹を見て言った。
「君がすぐにこっちに来るかも」
「僕が?」
「ええそうよ」
また一樹を見て同じ笑みを浮かべた。d
「迎えにね。その時はね」
「!?」
「また会うことになるわ。その時が来たらまた会いましょう」
「おばさんはここの人なの?」
「お姉さんよ」
早智子の言葉に一瞬ムッとした顔になった。
「素敵なお姉さん。いいわね」
「わかったわ、お姉さん。けど私ここに来るの?」
「人ってのはね、何時ここに来るのかわからないのよ」
お姉さんはそう早智子に語った。
「何かの間違いでここに来ることもあるのよ」
「そうなの」
「そうよ。けどそうした時はすぐ戻れたりするから」
「ふうん」
「まあ戻れない場合もあるけれどね。そういう時は諦めなさい」
「よくわからないわ」
「ふふふ、そうでしょうね」
首を傾げる早智子の顔を覗いて笑った。
「けど、覚えておきなさい」
そしてまた言った。
「君がここに来た時に連れて帰る男の子がいたらね」
「うん」
「その子を大事にするのよ。いいわね」
「わかったわ」
「君もよ」
再び一樹に顔を向けてきた。
「助け出した女の子は何があっても信じる。いいわね」
「うん」
一樹はよくわからないままそれに頷いた。
「そうするよ」
「それじゃあ。縁があったらまた会いましょう」
お姉さんの姿が急にぼやけてきた。荒涼とした場所も同じく急に掻き消えていく。
「それまで。さようなら」
それで終わりであった。二人が気付いた時には境内の裏の草むらの中だった。急に元に戻ったのだ。今までいたのが何処なのか、今一つわからなかった。けれどお姉さんの言葉はよく覚えていた。今も。
「草むらの中だったな」
一樹はそれを思い出して境内の裏手に回った。
「それでそこから」
草むらに入ると辺りを探す。するとそこに大きな黒い穴があった。すぐにその穴が何かわかった。
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