第二百三十一話 怪しげな茶その六
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「都からすぐです」
「だから上様もそう仰せられたのですな」
「我等に都、そして上様を守られよと」
「お館様もおられますし」
「行くぞ」
家臣達には答えないままだ、明智は告げるのだった。
「これよりな」
「はい、では」
「これより兵の用意をします」
「そして都にですな」
「入るのですな」
「都じゃ」
やはり答えない明智だった、そして。
明智はすぐに兵を起こさせた、それは速く。
瞬く間に出陣の用意を整えた、そして自身の号令により兵を都に進ませた。だがその時には。
堂順は城の中にはいなかった、城の留守を守っている者達は彼の姿が急になくなりいぶかしんで探したが。
やはりいなかった、それで不思議がって話した。
「中谷殿は何処か」
「それが見付からぬ」
「先程まで城におられたのに」
「何処じゃ?」
「何処に行かれたのじゃ?」
彼を探していぶかしむのだった。
「急に登城されたかと思えば」
「殿に茶を淹れられたかと思えば」
「また急に消えた」
「何処に行かれた」
「訳がわからぬわ」
それでだ、彼等は。
すぐにだ、堂順の家に人をやり所在を確かめたが。
何とだ、家の者達に言われたのだった。
「何と、今しがたか」
「臥せっていた病で亡くなられた」
「そうだというのか」
「ずっと登城出来ずに」
「そうであったと」
「ではあれは誰だったのじゃ」
ここでだ、誰もがいぶかしむのだった。
「あの中谷殿は」
「一体何処の誰だったのじゃ」
「中谷殿ではないとなると」
「あれは一体誰だったのじゃ」
「殿に茶を勧められたのは」
「どこの誰だったのじゃ」
誰もがいぶかしんだ、しかし。
堂順は死んでいた、このことは確かでだった。葬式が行われることにもなっていた。家の者も城に来ていたと言われて戸惑うばかりだった。
しかしだ、ここで。
誰かがだ、こう言ったのだった。
「そういえば妙に怪しかったな」
「その雰囲気がか」
「普段の中谷殿とは違っていた」
このことを言ったのだ。
「全くな」
「ではあれは中谷殿ではなく」
「他の誰かか」
「何者かが化けておったのか」
「ううむ、どうしたことか」
「このこと殿にお伝えするか」
「すぐにな」
城に来ていた堂順は彼ではなく誰かが化けた得体の知れない者であるということをだ、彼等は人をやって兵と共に都に向かった明智に知らせようとした。だが。
その使者はだ、途中の夜道でだった。
「何じゃ、ここは」
「おかしいのう」
不意にだ、入った山道でだった。連れの者共々。
得体の知れない道に入った、それでだった。
周りを見回してもだ、それでもだった。
誰も知らない道だった、使者の供の者が主に言った。
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