第二百三十一話 怪しげな茶その五
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「韓信や黥布、彭越は殺されていますぞ」
「しかし牛助殿達は」
「あの方々は譜代、安藤様も美濃で重きを為してきた方」
「だから追放で済んだのか」
「これが身分が低かった明智様なら」
「まさか」
「韓信達は外様でした」
劉邦から見ればだ、彼が秦の都咸陽を攻め落とした時は三人共劉邦の下にいなかった。そうした意味で完全に外様だったのだ。
「ですから殺されたのでは」
「それではわしは」
「韓信達は三族皆殺しでした」
妻子、親兄弟とだ。そうしてこの世から消された。彭越に至ったはその身体を切り刻まれて塩漬けにされて見せしめとして諸侯に配られている。
「流石にこの国ではありませぬが」
「三族まではか」
「しかしです」
「わしはか」
「少なくとも御身とご子息達はです」
その男系の者達はというのだ。
「果たしてどうなるか」
「では」
「討たれることをお望みでしょうか」
堂順は明智達を見つつ問うた。
「何もせずに」
「それは」
「しかし今動かれれば」
兵を挙げて信長を討てばというのだ。
「その時はです」
「わしは助かるか」
「お二方も」
すかさずだ、堂順は斎藤と秀満にも言った。
「そうなります」
「我等か」
「ここで兵を挙げてか」
「都におられる上様を討てば」
「その時は」
「はい、今がその時です」
まさにというのだ。
「生きるか死ぬかの」
「今すぐに動かねばか」
「時を永遠に失いまする」
「そうか、では」
明智も斎藤達もだ、自分達が知らないうちにだ。
その目に光がなくなっていた、虚ろで焦点が定まっていないものになっていた。そして表情も気がなくなってだ。
その顔でだ、堂順達に応えたのだった。
「今な」
「はい、さすれば」
「兵を挙げる」
明智は虚ろな声で言った。
「これよりな」
「わかりました、では」
「我等も共に」
斎藤と秀満も応えた、主と同じ顔で。
そしてだった、そこからは。
明智はすぐにだ、斎藤と秀満を連れて茶室を出てだった。他の家臣達に告げた。
「兵を動かすぞ」
「えっ、兵をですか」
「これよりですか」
「そうじゃ」
その虚ろな顔で告げるのだった。
「これよりな」
「あの、では何処に兵を進められるのですか」
「一体」
「急にそう申されましたが」
「上様からのお許しは」
「都に向かう」
明智は斎藤、秀満を後ろに控えてだ。家臣達の言葉には応えずにこう言った。
「上様のところにな」
「ああ、上様の警護で」
「それで上洛されるのですな」
家臣達はここでこう思った、自分達の主の言葉から。
「ですな、それならば納得がいきます」
「この丹波は都から目と鼻の先です」
「山陰から都に入るまさに入口」
「その守りの
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