7部分:第七章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第七章
「この豹は生きていた頃はそれは多くの人間を食い殺してきたそうだがのう」
「人食い豹ですか」
「うむ。本当かどうかはわからんが」
よくある与太話である。少なくとも僕はその時はそう思った。
「わしはこの剥製が気に入っていてのう。悪いがこれだけは売るわけにはいかん」
「わかりました。では他のものを買って満足するとしましょう」
僕はそれで納得した。そして幾らか買ってその店をあとにした。
それから僕はガイドと夜まで遊んでいた。ムングワが出るというので皆すぐに帰宅する。
「やっぱり街の人は皆怖がっていますね」
「そりゃそうでしょう。何人も死んでるんですから」
そう言う彼も早く帰りたそうである。
「では我々もそろそろ」
「はい」
この日はガイドの家に泊まることになっていた。彼は独身生活を満喫しているらしい。
「といってもちゃんと恋人はいますがね」
「今度合わせて下さいよ」
「そのうちね。ヘヘッ」
どうも自慢の恋人らしい。美人を恋人に持つのは誰でも嬉しいことだ。
僕達は夜の道を歩いていた。月明かりが照らしていた。
「こういう日はムングワも出ないでしょうね」
「ええ。それに出来るだけ安全な道を選んでますしね」
彼も用心していた。そして道を足早に歩いていく。
「待って下さいよ、早いですよ」
「やっぱり気になりますから」
どうやら彼も怖いらしい。
僕達は月に照らされた道を進んでいく。その時だった。
上の方で何やら呻き声が聞こえた。
「!?」
僕達は何だろうと思い咄嗟に顔を上げた。
だがそこには何もいなかった。いや、既にいなかったのだ。
奴は僕達の目の前にいた。そして牙を剥いていた。
「まさか・・・・・・」
僕もガイドも絶句した。そこにいたのはあの野獣であったのだ。
「ムングワ・・・・・・」
ガイドは震える声で言った。僕も恐怖で震えていた。
豹に似ている。斑点まである。そして均整のとれたしなやかな身体をしている。
だが大きい。まるで熊のようだ。昨日僕達が公園で見たのと同じであった。
まだあった。その目は血に飢えていた。野獣そのものの目であった。
「糞っ!」
ガイドは咄嗟に拳銃を取り出した。僕もナイフを出した。
ムングワは襲い掛かって来ない。僕達の隙を窺っているようだ。
「グルル・・・・・・」
唸り声をあげた。低くまるで地の底から聞こえてくるようだ。
僕達はムングワの目から視線を外さなかった。逸らしたら来る、直感でそう感じていた。
僕は右に、ガイドは左に動いた。そして奴の動きを少しでも撹乱しようとした。
僕は懐からナイフをもう一本取り出した。一本よりも心強いと思ったからだ。
ムングワは僕に顔を向けてきた。どうやら拳銃よりナイフ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ