6部分:第六章
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第六章
「では早速やるんですか」
「はい、徹底的にね」
彼の言葉は強いものであった。
「上の方から相当な圧力があったみたいですね」
ガイドが僕にそっと囁いた。
「かも知れませんね」
僕もそれに相槌を打った。そういう見方もできた。
だが僕にはこれといって関係がなかった。僕はその日はガイドと一緒に博物館等でムングワについて調べて過ごした。
「この国にいるまでに見つかればいいんですがね」
僕は店でガイドとピーナッツのシチューを食べながら話していた。このピーナッツのシチューはマリの料理だという。
なかなかいける。
「まあそうそう上手くはいかないでしょう」
ガイドは醒めた声で言った。
「そちらでも最近はそうでしょう?」
「ええ、まあ」
我が国の警察の検挙率の低下はやはり心配だ。
「けれど我が国は悪い事をしても捕まらないどころかそのまま刑務所から逃げちゃう奴がいますからね。日本の方がまだいいかな」
「いえ、そんなことはありませんよ」
僕はガイドのその言葉を否定した。
「確かに脱獄は滅多にありませんけれどね。そのかわり我が国ではマスコミや学者が犯罪者を擁護しますから」
「それは嘘でしょう」
彼は笑ってそう言った。
「いえ、これが本当に」
僕は手の平を振ってそう言った。
「信じられないことでしょうが」
ここで僕の顔はおそらく歪んでいたことだろう。
「証拠が見つかっていても冤罪はいけない、とか言うんですよ。そして犯人を無罪にしてしまうのです」
「酷いですね」
「それだけではありませんよ。その犯人がまた殺人をして捕まったんですよ」
「その人殺しを擁護していた人間は被害者に謝ったんでしょうね」
「まさか。また擁護していますよ」
「・・・・・・信じられませんね。少なくとも私には」
「残念ながら我が国の学者やマスコミはこういった手合いばかりなのです。少年が人を殺したらこの国ではどうなりますか?」
「死刑です。昔みたいに首を刎ねたりはしませんが」
「我が国では軽い刑罰で済みます。弁護士がその被害者の遺族の前で勝ち誇ってもいいのです」
「御言葉ですが」
ガイドは真剣な顔で僕に言った。
「弁護士や裁判官、学者といった職業を一新した方がいいかと。そんな酷い話ははじめて聞きました」
「僕も全く同じ意見です」
僕はガイドの意見に同意した。実際にこうした恥知らずで人権の本当の意味まぞ一切知らない輩が大手を振って歩いている。我が国の最も恥ずべきことだ。
「まあそれは置いておきまして」
僕は話題を変えたかった。あの連中のことは考えるだけで不愉快だ。
「ムングワはこの街に住んでいるのですかね」
「嫌な話ですね」
彼はその言葉に表情を暗くさせた。
「しかし昨日出ましたが」
「は
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