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野獣
3部分:第三章
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第三章

「ムングワの犠牲者ですか」
 中年の医師が出て来た。そしてムングワの話を聞くと顔を暗くさせた。
「実は今年に入って既に五人の犠牲者が出ているのです」
「五人もですか」
「はい、今年に入って急に出て来たのです」
 彼は暗い顔のまま言った。
「私も今までタンザニアの古い御伽噺だと思っていたのですがね。実際に目撃例もありますし」
「何でも豹かライオンに似た姿だとか。博物館でもそれはお聞きしました」
「その通りです」
 彼は答えた。
「博物館では豹やライオンの犯行とは思えないと言っていましたが」
「でしょうね。我々もそう考えております」
 彼の言葉は僕の予想通りであった。
「普通に考えたらです。豹やライオンの行動とはかけ離れております。しかし」
 彼はそこで言葉を続けた。
「あの毛からも、そして牙によるものと思われる傷跡に付着していた唾液からも調べたのですが」
 毛、と聞いて僕は次にくる言葉が予想できた。
「豹のものとしか考えられないのです」
「やはり」
 僕はそれを聞いて頷いた。
「ですがこの行動は少なくとも野生の豹のものではありません」
「といいますと」
「訓練されたものであると考えます」
 ここでも犯人の推測は同じであった。
「ではそのムングワを使うものがいると」
「はい。被害者の中にはナイフのようなもので切り裂かれたとおぼしき者もおりますし」
「ナイフのようなもの、ですか、爪や牙ではなく」
「はい」
 僕はそれを聞いて考え込んだ。
「実は博物館の方が言っておられたのですが」
「何かしらの宗教的な一団が関わっているのではないか、と仰りたいのですね」
「は、はい」
 警察もそれはどうやら考えていたようだ。僕も急に言われて驚いた。
「それは我々も考えています」
 彼は医者であると同時に警察関係の人間であるのでこうした話し方になる。
「ただ何処にいて何者なのか全くわからないのです」
「そうなのですか」
「貴方は日本人ですね」
「はい、よくわかりましたね」
 僕はいきなり言われてまた驚いた。
「英語の発音でわかりますよ。日本人の英語と中国人の英語は異なりますから」
「そうなのですか」
 それはよく言われることだが実際に聞いたことがないのでよくわからない。実際に僕も英語はあまり上手くはないのでたどたどしい言葉を使っているのだ。
「貴方の国へは一度行ってみたいとは思いますが」
「そうですか」
「はい。ではムングワに話を戻しましょうか」
 彼はそこで話を戻してきた。
「わかりました」
 彼の表情がもとに戻った。それにしても先程とは別人のように穏やかで真面目な顔である。
「私はどうもこの事件は何か裏があると確信しているのです」
「その宗教組織か何かがムングワと言
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