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野獣
3部分:第三章
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われるものを操っていると」
「はい。ムングワはおそらく既存のネコ科の猛獣でしょう」
「単に訓練されているだけで」
「軍用犬のような感じで」
「ですか」
 僕はそれを聞いて考え込んだ。
「しかし猫は犬に比べると訓練が困難ですが」
「それでもやろうと思えばできますよ。餌付けも可能ですし」
「それはまあ」
 しかしライオンや豹を訓練するのは相当な労力が必要だが。それが可能な人間がいるとしたならばかなり特殊な組織だ。だからこそ宗教組織と思われるのか。
「そうした宗教組織に心当たりはありますか」
 僕は尋ねた。
「いえ」
 彼は首を横に振った。
「この国は多様な宗教が存在しております。大体部族ごとに。そしてキリスト教やイスラム教も存在しています」
「そうですか。その中にライオンや豹を崇める宗派はありますか」
「それはまず最初に調べたのですが」
 どうやら違ったらしい。
「おそらくは地下に潜伏しているのでしょう。ですから容易に見つからないのです」
「そうなのですか」
 これもカルト宗教にはよくある話である。
「タンザニアにムングワが現われた頃から宗教組織の存在は噂されていましたね」
 僕はそのことを尋ねてみた。
「はい」
 彼は答えた。実際に今宗教組織の話になっているのもそれが根拠だからだ。
「そうした組織が流れ込んできた経路等はありませんか」
「全く。少なくとも建国以来はありません」
 彼は首を横に振った。タンザニアからここはあまりにも遠い。それは容易に調べがつく。
「余計に地下が怪しいということなのですが」
 彼は顔を顰めたままである。
「ですが地下となると我々は捜査することができません」
「何故ですか」
「裏の社会の力が強いですし」
 これは多くの国にある話である。彼等は国の上層部と結託している場合がありタチが悪い。
「それに地下世界は複雑に入り組んでいるのです。犯罪結社一つ潰すのにも多大な労力と犠牲がいるのです」
「そうなのですか」
 これは望み薄だと思った。
「しかし捜査は続けますがね」
 この言葉は強がりにしか聞こえなかった。
「ムングワを捕らえないとこの国がその恐怖に支配されたままになりますから」
 彼はそう言うと窓の向こうを見た。もう陽は落ちようとし暗闇が近付いてきていた。

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