第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十九 〜義姉妹〜
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うむ。月と何進殿には私が書状を認める。お前に託したぞ」
「お任せ下さい、父上。必ずや、お届けします」
何とも、頼もしい娘だな。
「では、この件はこの手筈で。ゴホン、今一つ、報告がございます」
疾風は咳払いをして、続けた。
「孫堅殿と劉表殿に、諍いの兆しがあるとの事です」
「原因は?」
「どうやら、長江水運の利権を巡っての事のようです。此方も、詳細は現在調査中ですが」
それだけならば、隣接した他州での出来事と片付ければ良いが。
疾風が態々この場で知らせるという事は、何か裏があるのであろう。
「続けよ」
「はい。どうやら荊州の内部で、この件は我らが荷担、或いは裏で糸を引いているのではないか、という疑念を持たれているようなのです」
「ほう。その根拠は?」
「まず、紫苑殿の事があります。ご承知の通り、この地に対して劉表殿が野心を抱いた際、紫苑殿の働きでそれが水泡に帰しました」
「……うむ」
「その紫苑殿が、劉表殿の元を辞す。……劉表殿ご自身はいざ知らず、周囲の将官が素直に受け取るとは限りませぬ」
「なるほど。全てが我らの仕組んだ芝居、と」
「そうです。無論、紫苑殿が我らのところに帰参するのは、紫苑殿ご自身の意です。ですが、それを証明する手立てがありませぬ」
睡蓮(孫堅)との諍いを前に、劉表の主将を引き抜いた形になれば、当然睡蓮が有利になる。
つまり、最初から荊州に野心を抱いていた、と讒訴する事も可能という事か。
何とも悪意に満ちた解釈だが、考えられぬ訳ではない。
ましてや、結果的には劉表に煮え湯を飲ませた格好になっているのだ。
「では、どうする? 紫苑に思い止まらせるか?」
「いえ、それは難しいでしょう。紫苑殿の意は固いようですし。それに、今から翻意すれば、それはそれで疑念を呼ぶだけかと」
何とも、厄介な事態になったものだ。
「むむ……。一度、睡蓮とも話をしておくべきか」
「……難しいところですね。稟や朱里達に諮っては如何ですか?」
「そうだな。疾風、いずれにせよ動いて貰う事になるだろう。用意を頼むぞ」
「はっ!」
いずれも看過出来ぬ事ばかりだが、必ずや打破出来よう。
……いや、打破せねばならん。
「失礼します」
年配の男が、入口から顔を覗かせた。
疾風が素早く席を立ち、男のところに寄っていく。
「どうした?」
「は。趙雲様と郭嘉様がお見えですが、お通しして宜しいでしょうか?」
「星と稟が?……歳三殿、二人に知らせてあるのですか?」
「いや。そのような猶予などなかったであろう?」
「確かに。どうなさいますか?」
「隠れる必要もなかろう。此所に通すが良い」
「承知しました。おい、素知らぬ顔で、この部屋に案内しろ」
「畏まりました」
男もまた、素早い動きを
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