二十話:正義の形
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―――今日はやてが死ぬのは運命だったんだよ」
「うおおおおッ!!」
「だから、静かで平和な暮らしなんて―――幻だったんだよ」
迫りくる鋼の拳。それを容赦なく穿つ魔導士殺しの銃弾。
血しぶきを上げ、弾丸に貫かれた腕をなお、切嗣に向け伸ばす。
そして、あと少しで触れるといったところで―――止まる。
「……お父上ッ」
力尽き、血糊を切嗣のコートに押し付けながら崩れ落ちるザフィーラ。
最後の最後に彼の拳が届かなかったのは力尽きたからなのか。
それとも、最後の最後まで切嗣を信じていたかったのか。
それは彼自身にもわからない。
「あの子の傍に行くといい。永遠にね、ザフィーラ」
――お任せください。必ず闇の書を完成させてみせます――
騎士の中で誰よりも責任感が強かった男だった。
一度誓ったことはどんなことがあっても必ず成し遂げてみせた。
無口ではあったが強い信頼を寄せられていたのは知っている。それを裏切った。
泣きたかった。ただ、ひたすらに泣き叫びたかった。
泣いて許しを請いたかった。そんなことなどできるはずなどないのに。
「……これで準備は整った。高町なのはとフェイト・テスタロッサは?」
「四重のバインドにクリスタルゲージだ。数分は出られない」
どこからともなく現れた仮面の男の姿をしたアリアに淡々と尋ねる。
アリアも淡々と返してくるがどこか気遣うような視線を感じるのは気のせいではないだろう。
だが、こんなところで弱音を吐くのなら初めからこんなことなどしていない。
切嗣はコンテンダーを強く握りしめて声を絞り出す。
「それで十分だ。はやてを……八神はやてを連れてきてくれ」
「……分かった」
青い魔法陣が屋上に浮かび上がり、光を放ち始める。アリアはそれと同時に姿を隠す。
すると中から歩くことができずに地面に座り込んだ状態のはやてが現れる。
すぐにでも支えに行ってあげたいという感情が呼び起こされるが体は動かない。
何が起きたのかわからず呆然とこちらを見つめるはやてに能面の様な表情で声をかける。
「メリークリスマス、はやて」
「な、なにが起こったん? 急に屋上に―――あ」
困惑した表情で尋ねるはやてだったが、切嗣のすぐ足元で血塗れで倒れ伏す二人の姿を見て言葉を失う。
その二人とはヴィータとザフィーラの二人組である。
すぐさま駆け寄ろうとするが立ち上がることすらできない彼女では這って動くことしかできない。
「おとん! 早よ、手当せんと、ヴィータとザフィーラが死んでまう!」
「その必要はないよ、はやて」
「なんでや!? なんで、そんなこと―――」
「―――もう、死んでるんだよ」
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