二十話:正義の形
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「切嗣ゥウウッ!!」
憎しみとも、悲しみとも、怒りとも、分からぬ声が夜空に響き渡る。
リンカーコアを蒐集中ならば息の根を止めても蒐集に問題はない。
一思いに楽にしてやろうと考え、切嗣はコンテンダーをヴィータに向ける。
――このケーキ、ギガウマじゃねーか!――
どこか刺々しい態度も鳴りを潜め、甘いものやアイスに目がない末っ子的存在。
自分に甘えてきてくれるのが嬉しくてついつい甘やかすことが多かった少女。
素直になれない態度で自分に気を使ってくれた表情が浮かび上がる。
心が声にならない声を出して今すぐ引き金から手を離せと絶叫する。
だというのに、この指先はピクリとも震えはしない。
「今まで楽しかったよ、ヴィータ」
無慈悲に、無感情に、鉛玉は風を切り、音を超え―――少女の胸を穿つ。
なのはの悲鳴が辺りを包む中、ヴィータの体はその服のように真っ赤に染まっていく。
同時にリンカーコアの蒐集も全て終わり、消えていく。
本来であれば体も消えていくのだが演出のためにアリアに側だけを残させる。
「オオオッ!」
「ザフィーラか……待っていたよ」
夜空にこだまする雄叫びにゆっくりと振り返り、向かってくるザフィーラを空虚な瞳で見つめながらコンテンダーに装填する。
ザフィーラは勢いそのままに拳を振り上げて殴りかかって来る。
しかし、切嗣の顔に当たるという瞬間にピタリと腕を止める。
ブルブルと体を震わせながら、腹の底から絞り出したような声を出す。
「私は…っ、主はやてとその家族を守る盾の守護獣……ッ! だというのに、なぜッ!?」
「仕事熱心で感心だね。だけど、僕は君達を家族だなんて思っていない」
「私は! 私達はあなたを本当の家族だと思っていたッ!! この拳はあなたに向ける為にあるのではなかったッ!!」
「そうかい、そいつは光栄だね。だけど、何もかも終わりだ―――奪え」
心まで凍り付くような冷たい音程で闇の書に命じる。
白いリンカーコアが取り出され見る見るうちに小さくなっていく。
だが、ザフィーラはなおも気持ちで踏みとどまり続け、拳を振り上げる。
「私達はただ静かに暮らしたかっただけだ! なのに、何故それを!?」
「はっ、今までさんざん人を殺してきた人間がのうのうと生きられるわけがないだろう?」
ザフィーラの思いの丈を切嗣は鼻で笑ってみせ、コンテンダーをザフィーラの拳に向ける。
しかし、その言葉は果たして誰に向けて言ったのであろうか。
誰よりも人を殺してきたにも関わらず、平和を享受していた自分自身に向けて言ったのではないのだろうか。
「それにね。君達が現れた時から、いや、闇の書がはやての元に現れた瞬間から
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