第十一話「オー・シャンゼリゼ」
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階ごとに二台は必ず置いてある。便利といえば便利であるが、それでもハッキリ言えば税金の無駄遣いである。世の中、貧困に苦しむ人々が同じ国の中で生きているというのに、こうしてのうのうと豪勢な寮で暮らしているので、わずかながらも罪悪感を感じてしまう。
――政府は、ISに力を注ぎすぎだっつうの?
それは、日本だけではなく世界各国全てもISに力を入れている。表社会では、ISこそが国の象徴といっても過言ではない。ちなみに、裏社会の象徴はRSと聞いている。まるで、コインの裏と表のように、光をIS、影をRSと例えた様である。
「えーっと……自販機は、あった!」
一つの階は意外と広いが、それでも自販機を見つけるにはそんなに時間のかかることじゃない。
俺は、自販機へ歩み寄って一枚のカードを取り出して、それを自販機の箇所にかざしてジュースと緑茶の缶を購入した。IS学園の施設内であれば、このカードで大抵のものは手に入る仕組みになっている。さらに、生徒全員に月ごと一定の所持金が政府から与えられるため、学園内の外へ行ってクレジットカードにより買い物が堪能できるのだ。
大抵、現在の日本で一番税金によって問題視されているのはIS学園へかける金だろう?
「世知辛い世の中だね……」
と、俺は自販機から落ちてきた缶を拾い上げてそう呟いた。
「アンタにそれを言う資格なんてないわよ?」
「……?」
ふと、背後から掛けられた声に振り向くと、そこにはいつかの妹が立っていた。
「舞香?」
「気安く呼ばないでくれる? 糞兄貴」
「……糞でも、まだ俺のことを兄貴って呼んでくれるのか?」
逆に俺は、少しにこやかにして話した。
「何ニヤニヤしてんの? ほんっと気持ち悪……」
「何か用か?」
俺が尋ねた。
「アンタが居たからバカにしに来た……っていうんじゃダメなわけ?」
「ああ……どうせ、学食で勉強してたとこを見たんだろ?」
「嫌でも見るわよ?」
「そう、じゃ」
俺は、これ以上は構っていられないと彼女へ背を向けた。すると、舞香はそんな俺の態度が気に入らないのか、呼び止めてくる。
「ちょ、ちょっと! 待ちなさいよ!?」
「まだ何か用か?」
「この私に対して、別の言い方があるんじゃないの!?」
「どういう言い方だよ? 『代表候補生』にでもなったのか?」
セシリアみたく彼女も威張った態度を取るので、俺は少し呆れた。
「アタシはアンタなんかよりずっと優秀なのよ!? 勉強やスポーツも、どれを取るにもアンタにより遙かに劣らないわ!?」
「それじゃあ、イギリスや中国の代表候補生にも楽勝で勝てるんだろうな?」
「ッ……!?」
その言葉に舞香は黙った。中国の甲龍はともかく実際にイギリスの代表候補生と戦い、厳しい条件の中でもそれに打ち勝った。自慢で言うわけではない。ただ、俺
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