第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十八 〜新たな娘〜
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自身の事を思っての計らいだ」
「そ、それは……」
「それでも、まだ洛陽に行くと申すか?」
「で、では……私にただ座して、何進様や姉様が追い込まれていくのを見ていろと?」
「そうは言わぬ。そこでだ、お前に話がある」
取り乱した董旻を、無理に部屋に連れて帰るのは得策ではなかろう。
些か雰囲気に欠ける場ではあるが、此所で話をする事にした。
「……わかりました。私が、徐晃さんのお手伝いをすればいいのですね?」
董旻は、私と疾風の提案に、素直に頷いてみせた。
「そうだ。決して安全とは申さぬが……お前の望み通り、外での働き場となる」
「無論、暫くは修練を積んでいただく事になりますが」
「構いません。このまま、鬱々とした毎日を過ごすのは耐えられませんし」
本人に異存がなければ、これで決まりだな。
「ただ……」
と、董旻は上目遣いに私を見る。
「何かあるのか?」
「は、はい。……一つだけ、お願いがあります」
「私にか?……良かろう、申してみよ」
「……では、申し上げます」
居住まいを正してから、
「土方様。私も、姉様と同じように……その」
「月と?……お前も、我が娘になりたい、と?」
「そうです。姉様の父上が土方様ならば、私もその方が自然です」
「それはそうだが。だが、それで良いのか?」
董旻は、大きく首肯した。
「……そうか。お前がそう望むのなら、私にも異存はない」
稟と疾風も、異論はないようだな。
それを確かめてから、
「では以後、お前は真名で呼ぶが良いな?」
「はいっ! 白兎とお呼び下さい、父上!」
父上か……何故か、懐かしさを覚える呼ばれ方だな。
「白兎。我が娘とは言え、甘えは赦さぬが……覚悟は良いな?」
「勿論です。宜しくお願いします、徐晃様」
「私も疾風で構いませぬ。白兎殿、改めてよしなに」
「真名は稟です。宜しくお願いします、白兎殿」
どこか、安堵の様子を浮かべる白兎。
思えば、ずっと気を張り詰めていたのやも知れぬな。
……もっと早く、気付いてやるべきであったか。
「しかし、妻もおらぬのに二人の子持ちか。……締まらぬ事だと言われような」
「考え過ぎですぞ、歳三殿。……この戦乱の世が終われば、改めて妻にしていただくのですからね」
「殿、無論私もですぞ」
「ふふ、愚問ですね。私達が、歳三様から離れる訳など、天地がひっくり返ろうともあり得ませんから」
疾風と彩はともかく、稟までもがその夜、共に床に入ってきた。
病み上がりの身で無理をさせたくはないのだが……本人のたっての希望故、致し方あるまい。
「もう、休むが良い。今宵は……ならぬぞ?」
「仕方ないですね、稟の事がありますから」
「その分、明日は……ふふ」
「……二人とも、少しは自重して
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