第十九話・皇帝の薔薇園
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軽口を叩いている間にロザリンドがめまいから回復してしまい、彼女は溜息をついて気障に髪の毛を掻きあげた。
「ふぅ…………何より、君と戦う理由は無い。引きたまえ」
「俺にはあるんだよ! 頭使いやがれ!」
ちらと視界の端でマリスが解放された姿を捉えるが、拘束による締め付けと呼吸制限により置きあがれていない。
体力も消耗しており、挟み打ちは無理に近い。
……だが、諦めては居られない。
「はあっ!おらあっ!」
瓦礫をつかんだまま鈍器の如く、続けてロザリンドへ叩きつけていく。
「く、ぬぅ……はっ!」
「ちっ……!」
それを鎧で受け流して後ろへ跳ぶ。
迷うことなく俺は置いすがり、瓦礫を振りかぶって叩きつけた。
だが……感触がおかしい。
「無駄だよ」
「……!」
しまった……【天使の羽衣】を纏わせちまったか……!?
これで俺の攻撃は通らなくなってしまった……万事休す……!
「くそがあっ!!」
「む!?」
だからって諦められるか! もう一発……もう一発ぶち込めば、打ち場所を間違えなければ気絶させられる!
それにロザリンドは弱者に手を上げられない性格だと書いてあったし、演劇部で元の自分に嫌悪感を抱いているのならば、より成り切る事を目指して “ソレ” を外す事などをしない筈!
「うおおおっ!!」
「くぅ……」
なら……利くまで、ぶっ叩くしかない!
「いい加減にしたまえ!」
「う、おおっ!?」
煙を払うような気軽な動作と、所作に似合わぬ声をもって、俺は無様に弾き飛ばされる。
アスファルトに転がり、傷こそない物の瓦礫がどこかへ飛んで行ってしまった。
「君の熱意はよくわかった。外道な行いをしても、守りたいというその気持ち。敬意を表しても良いぐらいだ……だからこそ、諦めたまえ」
「―――しい」
「……? 何だ―――」
「喧しい!!」
「! まだ突っ込んで……!」
打ちに溜まった鬱憤を吐き出すかのように怒号を叩きつけ、俺は素手のままに走りだした。
諦めろ? それはお前じゃあ無く、俺達が決める事だ……!
まだ諦めるには足らない……マリスが回復するまで持ちこたえれば、まだ希望はある! 利かなくてもいい、どんな手段でもいい、それまで持ちこたえさせる!
「おおおぉぉっ!!」
「……全く」
あきれ顔で頭を振り拳を振りかぶる俺を見て、軽く片手を出して対処するロザリンドの所作が……ただただ俺の逆鱗を刺激する……!
利く利かないじゃねえ―――それにかかわらず、持ちこたえさせなけりゃいけねえんだよ……っ!
「シイィアァッ!!」
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