第十九話・皇帝の薔薇園
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思い出す。
属性を帯びた剣を当てるには絶好の機会だと言うのに、ロザリンドは最初に発動した位置から一歩も動いちゃいないどころか、赤いオーラまで解除されていた。
【天使の羽衣】が無い今なら……マリスの攻撃と手ただでは済むまい。
「マリス! 聞こえたな!」
「……聞こえた……だから突っ込む」
無表情の中に覚悟を見せ、眉を若干ひそめて大地を蹴る。
【鋼糸鏖陣】が激しく揺らぎ、刃物と化して振われる。
「でもね、この技はロザリンド様が敵だと認識した者を、薔薇がオートで攻撃し続ける技でもあるの」
―――そして何とも普通に捕まった。
「……楓子ひどい……絡め取られた……」
「そっちを先に言いやがれデコ助!!」
「ふんぎゃらがあああぁぁぁっ!?」
肘をぶち当てて地面に叩き伏せさせた楓子には目もくれず、その場に放置して俺は隠れながら回り込むように走り続ける。
「ははははは! 勝負あった様だね!」
最早様相が殺戮の天使ではなく薔薇ダルマと化しているマリスの前で、ロザリンドが勝利の高笑いを決めている。
《俺嫁力》が使えない以上、絶体絶命としか言いようがねえ。
だがそんな状況下でも、ロザリンドは腕組みしながら一歩も動かない。
念には念を入れて【皇帝の紅薔薇園】を発動し続けてやがるのか……。
「諦めてたまるか……!」
目的の詳細も分からないのに楓子を浚わせる訳にはいかないし、何より此方の切り札であるマリスを失う訳にもいかない。
個人的に言うなら、さんざん無視され舐められ、怒りはかなり溜まっている。
……一発でも顔を明かさねば気が済まない!
「さて、楓子君を探さねばいけないから……」
出来るだけ気配を消して後ろへ回り、俺は瓦礫を握ると腕へ力を込める。
先にも説明があったが【皇帝の紅薔薇園】は無尽蔵のオート波状攻撃が可能な変わり、己は攻撃であれ防御であれ他の行動を取れないという弱点がある。
今のこいつは超防御力を誇る【天使の羽衣】をまとっておらず、人間と肉体構造の変わらない。
「オラアッ!!」
「え? ちょ、ふげごおぉぉっ!?」
……つまり、俺の攻撃も意味がある!
遠慮など一切なしに思い切り瓦礫を後頭部へ叩きつけ、顔面からアスファルトへ激突させてやった。
されど人外は人外なのか、それとも当たり所が “ロザリンドにとっては” 良かったのか、気絶はせずよろめくだけで済んでしまった。
「くぅ……確か麟斗君だったか……君、思い切りがよすぎるだろう……!? 瓦礫で後頭部強打とか洒落にならない……!」
「こっちはただの人間なんだ。それぐらいはやらねえとな」
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