第十九話・皇帝の薔薇園
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よ その罪なる矛盾の力を戒めへと変えて 我が眼前の敵を縛するべし……!”』 」
それは宛らオペラの如く、歌うような口ぶりで呪文を紡ぎ、地震など起きては無いのにアスファルトへ無数の亀裂が走る。
亀裂を破って地表へと現れた―――否、咲き誇ったのは『薔薇』。
灰色の駐車場を真っ赤に変えるほど大量に、深紅の薔薇が埋め尽くしていた。
これを見た者のうち何人が……自然の贈り物たる高貴な薔薇園ではなく、人類の生み出した無機質な駐車場だと気づく事が出来るのだろうかと、そう思えてしまえるぐらい大量に。
「ででででででで出たああぁーーーーー! これぞロザリンド様の究極奥義! 【皇帝の紅薔薇園】だあぁーーーーーーっ!!」
空気も読まず騒ぎ立てる楓子へと聞くまでも無く、【皇帝の紅薔薇園】の効果が俺にも理解出来た。
肥料を与え過ぎたってそうは成らないだろう、ビデオの早回しの様に異常成長を始めた薔薇達が、マリスへ向けて一斉に襲いかかったのだから。
「……邪魔……!」
身のこなしだけで対応していては間に合わないと、【鋼糸鏖陣】を使って薔薇の群れを薙ぎ払う。
飛び散る花弁、それは恰も薔薇達の血液の様だ。
しかしそれでも効果が無い。後ろから前から左右から迫り、斬った側からも再生して次から次へと地面を突き破り、終わりが全く見えてこない。
刈っても飛ばしても、裂いても斬っても、止む気配が無い。
「……厄介な……!」
これじゃあキリがない、マリス側がジリビンだ……!
「無駄さ、ボクの【皇帝の紅薔薇園】は無限の波状攻撃……つまり! ボクの美しさは永遠! ボクの気高さは不滅という事さ!」
最初に呟いたのち気合入れの声しか出せないマリスに対し、ロザリンドにはそんな世迷いごとをほざいてポーズすら決められる余裕がある。
またも最初と同じ、いや最初よりも悪化した攻防展開に持ち込まれてしまっている。
もうノートを呼んでいる時間が惜しい。
此処はあいつに聞くしかねえ……!
「おい楓子! どうにかならないのか!」
「だから妹は付けてってば!? ……あ、えっと大丈夫! これはチャンスでもあるんだから!」
「チャンス……!?」
思わぬ好機を招くであろうの言葉に、目線だけでなく顔ごと楓子の方へ向けてしまう。
「確かにロザリンド様の【皇帝の紅薔薇園】は強力だけどその分リスクが大きいの! 一歩も動かず量の足から魔力を地面へ流し込んでいなければ維持できなくて、【天使の羽衣】も【剣聖の領域】も強制解除されちゃって、隙が出来るんだから!」
「……何……!」
よく見なくとも、思い返さずとも分かる。
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