第十九話・皇帝の薔薇園
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遠くに逃げているはずなのに、ほんの二メートル先に火災家屋が出現したかのような―――あるいはそれ以上ともとれる、高熱を体全体へ叩きつけてくる。
それ自体が実態と質量をもっているかのような、余りの濃密な炎の渦がマリス目掛けて唸りを上げ襲い来た。
だがな、ロザリンド―――
「……貴女は、確かに強い」
それは悪手だ。
「……でも、戦闘経験が足りない」
【漆黒爆弾】を炎渦巻きし乱気流へと、何の迷いも無く投げ込んだ様子を見て、俺は思わずニヤリと笑う。
アスファルトをを焦がし突き進む火焔の一撃が、幾つもの【漆黒爆弾】による爆発に巻き込まれた。
その途端うねりにうねって……嘘のように消え去ってしまった。
ただ焦げた地面だけが、攻撃の存在と激しさを物語る。
「そっか! 酸素供給と燃焼速度のバランスを、マリスたんの【漆黒爆弾】で無理やり崩したのね! 兄ちゃんが『炎と風』以外に気を付けろ、って言ってた理由はこれなんだ!」
「まあな」
「……頭いい、麟斗」
ロザリンドの火焔が魔力込みなら危なかったかもしれないが、飽くまで彼女の技は『属性を付与する』だけ。
操る事は出来ても、それ自体を存在し続けさせるのは、不可能だと俺は推測した。
仮に魔力込みだったとしても、各言う【漆黒爆弾】すら魔力による代物なので、威力を弱めること自体は出来るのではとも予想していた。
結果は……御覧の通りだ。
「……覚悟」
「しまった……!」
俺への称賛を告げながらも、しっかり突撃を開始していたマリスに懐まで潜りこまれ、勝利を確信した一撃を破られたロザリンドは衝撃からか、即座に対応できていない。
スペックの差を中身の実力の差が上回ったのだ。
このまま一撃を決め、此方のペースで進める事が出来れば万々歳だ!
「……このボクとした事が、最後の戒めを解いてしまった……」
その言葉で、俺は糠喜びすらできないと悟る。
「とうとうこのボクに正真正銘の本気を出させてしまった様だね! 最後たるに相応しきボクの秘奥義を……民に永劫称えられし絶技を! 今お見せしよう!!」
「【剣魔の領域】キタアアアアアァァァァッ!!」
「最初から使え……! 発言が矛盾しまくってるじゃあねえか……!」
勿論俺の抗議などロザリンドに届くはずもない。
炸裂弾でも仕込んでいたか彼女の籠手が内側から爆散し、見えぬ刃で斬り付けられて居るかのように薔薇模様の傷が刻まれていく。
地を滴るその腕を眼前に掲げ、ニヤリとして居ながらも決して卑しくは見えない、微笑を浮かべてみせた。
「 『“麗しきものよ 刺もつ持つもの
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