第十九話・皇帝の薔薇園
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ボクを愚弄した罰だ! 本当の! 正真正銘の全力! 受けてみたまえ!!」
「……逃げて」
「言われなくともッ……!」
先の横転で頭を強かに打ち、気絶している楓子を抱え上げ、今度こそ離れた車の影へ跳び込む。
「 “我が宝剣 力に満ちよ 宿せ燎火!” 」
今度ロザリンドの件が帯るは、爆ぜる雷撃ではなく燃え盛る大炎。
その焔は彼女の髪の色と相まって、より一層迫力が増す。
それは意思有る炎が此方を睨みつけているように感じてしまう。
「覚悟しろ殺戮の天使! 未だ嘗てボクの全力を受け切った者は一人とて存在しない! 己が失言を悔やみながら、我が猛火と共に消え行くがいいっ!!」
先までは大なり小なり圧倒されたセリフも、元・演劇部がやっていると分かると少し冷めて見える。
自己陶酔しながらノリノリでやっているんだろうか……と、そう考えて頭が痛くもなる。
だが、それは飽くまで本人限定の話。
剣より迸る焔の威力は決して笑い飛ばす事も、洒落にすることも出来はしない。
「我が右手に【ミカエルの剣】!!」
紅蓮の刃が解き放たれ、轟々とマリス目掛けて飛び込んでくる。
が、此処で疑問。
……詠唱やら攻撃の際もそうだが何故コイツは自分から、敵へ放つ攻撃の属性を教えているんだ?
「技名を言わなけりゃならねえ設定があるのか……?」
「ううん。多分ロザリンド様が自分に酔ってるだけ」
何時の間にやら目覚めていた楓子が、俺の独り言へ反応する。
設定に無いなら全く持って意味無いな。
自分から『今から合図と同時に、こういう攻撃をするからな!』と教えてどうする。
「精霊に呼びかけたり、気合を高めて威力が上がるなら……まあ意味もあるんだろうが……」
「あああぁぁっ!?」
「……どうした」
「そういう設定にすればよかった! 格好よかったのに!」
「……」
「もしかして兄ちゃんて才能がある?」
「要らんわそんな才能」
「次は二人で合作しよう! 私が基礎アイデアで兄ちゃんが暴力は止めてぇぇぇ!?」
頭をつかんで軽く自動車にぶつけてやる。
お前の戯言につきあったり、コントをしている場合じゃあ無いんだっての。
ホント、場の空気をぶち壊す天才としか言いようが無い。
それでいて肝心な時にその才能を発揮しないのだから、ただただ鬱陶しい。
……何か他に役にたてんのか、こいつは。
「灰燼と化すがいい! マリシエルウゥゥーーーッ!!!」
楓子の存在自体ボケだとしか言いようがない。
されどそいつが “生み出した” ロザリンドの撃ち放ちし劫火の嵐は……決してボケやコントでは済まされない。
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