4部分:第四章
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第四章
「では君」
「はい」
「そのマイスターザックスのところに案内してくれ」
「お師匠様のところにですか」
「うん、いいかな」
「はい、それでしたら」
ダーヴィットはにこりと笑いました。そうして答えるのでした。
「それでしたらこちらへ」
街の奥の方を手で指し示します。
「おいで下さいませ」
「わかったよ、そちらだね」
「ええ、どうぞ」
ダーヴィットに案内されて街の中に入って行きます。街の喧騒も心地よく聞こえます。それはきっと歌の騎士が希望を見出していたからなのでしょう。とにかく彼は今これで見つけたと思っていたのでした。
やって来たのは小奇麗な家。茶色の扉を開けると家の中に一人の初老の男の人がいました。見れば窓のところに一人で立っていました。
濃い髭を顔中に生やした背の高い人で青いシャツと黒いズボンの上に皮のエプロンをかけています。髪は濃い茶色でもじゃもじゃとしています。目は穏やかで深い知性をたたえています。歌の騎士は彼の前にやって来て尋ねるのでした。
「貴方がニュルンベルグのマイスタージンガーでしょうか」
「いやいや」
ところが男の人は穏やかな微笑みでその言葉に首を横に振ります。
「それは私だけではありません」
「貴方だけではないと」
「そうです。マイスターは沢山いるのですよ」
「何と、そうなのですか」
「職人と歌手は同じものですので、この街では」
「はあ」
これは歌の騎士にとっては驚くべきことでした。彼は今まで宮廷で歌うだけだったからです。街のそうしたことは知らないので余計にそうでした。
「職人としての技術と一緒に歌手としての技術も学ぶのです」
「成程」
歌の騎士はザックスのその言葉に頷きます。
「そういうことなのですか」
「はい。それでですね」
ザックスは歌の騎士に対して自分から声をかけてきました。
「貴方は私に用があって来られたのですね」
「わかるのですか」
「ええ」
歌の騎士の言葉ににこりと笑って答えます。
「貴方のお顔と御様子を見れば。すぐにでも」
「そこからですか」
「そうです。貴方はじっと私の顔をすがるように見ておられる。それを御覧になると」
「そうだったのですか」
「はい。それで何の御用件でしょうか」
「そこまでわかっておられるのならば話は早い」
歌の騎士は勇む様子でザックスに声をかけます。
「私はあるものを探しているのです」
「そこは普通にあるものではないのですね」
「はい、それはこの世で最も大切なものです」
「ほう」
ザックスは歌の騎士のその言葉に何かを察したような目をしました。ところが歌の騎士はそれを語るのに必死で彼の表情の変化には気付いてはいません。
「それが何か。御存知でしょうか」
「それを見つけることは
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