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逆襲のアムロ
10話 仮面の下の微笑 11.19
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ご苦労だった」


そう操縦者が呟くと、グラナダの防衛隊がその機体に向かって集中砲火を加えた。しかし、その機体は弾幕の中をくるくると回るようにすべて避け切り、ザクを一体ずつ武器のみを手持ちのビームサーベルにて破壊、またはマシンガンを取り上げてはその銃でザクやドムの武器をピンポイントに破壊した。

決着はものの2分だった。キシリアはすぐ防衛隊に戦闘中止を命じ、その試作機に感嘆した。


「素晴らしい・・・夫人!いい買い物をジオンはできた。有り難い」


「そう言っていただいて嬉しいですわ」


「ちなみにあの機体は我が軍のに似ているが、ちょっと仕様が異なるな」


「そうですね。財団の方では一応<プロト1>と名付けております。何せ商品登記もしていない試験機ですので・・・」


キシリアとマーサが会話していると、キシリアに命じられた部下がその試験機の操縦者を指令室へ案内した。


「ふむ、手荒い歓迎でありましたがプロトサイコフレームの調整での肩慣らしにちょうど良い感じでしたキシリア様」


その操縦者である男がキシリアに話した。


「貴方が操縦者か。名前を何という」


その質問にマーサが困った顔をした。


「申し訳ございませんが、この者に名前がありません」


「なんだと。どういうことだ」


「この者は5年前に宇宙を漂流しておりまして、偶然財団が救助しましたがその時より記憶喪失であります。彼の発想が今後キシリア様のためにお役に立てると思います。彼をお使いください」


「そうか。しかし、名前がないと不便だな・・・」


男も顎に手を添え考えていた。


「そうか。考えたこともなかった。流石に軍となると必要だな・・・」


3人とも思案顔になっていた。すると男が思いついた。


「私は何も持ち合わせておりません。自分で何者であるかも今後わかることはないでしょう。ですから、フル・フロンタルとでもお呼びください」


「フル・フロンタル(丸裸)か。何もないところから始めようとするのだな。わかった。お前は今日からそう呼ぼう。そして我が軍へようこそ。貴官を少佐待遇で歓迎しよう」


キシリアがそう言うとフル・フロンタルはお辞儀をした。


「恐縮ですキシリア様。宜しくお願い致します」


キシリアとマーサは満足そうにしていた。フロンタルも少し笑みをこぼしていた。
しかし仮面の下に隠れた眼は既にこの世に絶望していた。

何故絶望していたかは記憶のない本人も不明だった。
彼の心の中はこの世の憎悪のすべてが集約するが如く、すさんで朽ち果てていた。
彼はこの世に何も期待してはいない。

願わくば滅びこそが彼の望みであった。

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