原作開始前
EP.3 ギルド加入、しかし……
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ろう。
それは、旅の中で出会った人々の心に刻まれた傷と恐怖がはっきりと物語っている。
けれど、その存在を否定するという事は自分の存在を否定するという事だ。
彼らの存在なくして、自分の存在はあり得ない。故に、例え愚かと罵られようとも、他の誰が彼らと自分を否定しようとも、自分だけは彼らの存在と業を認め、受け入れなければならない。
彼らが歩んだ道を、果たせなかった悲願と無念を忘れないために。
自分という存在の価値の有無など問題ではない。それができるのは、もう自分しか残っていないのだから。
故に忌み名を名乗ったのだ。己から進んで名乗る事は無くとも、自分を偽る事だけはしたくなかったから。
「……俺をどうするかは、あなたに任せます。でもあの子の、エルザの目だけは治してやってください。……俺からは以上です」
激しい炎のような眼の光とともに吐き出された一念から一転、ワタルは静かな口調でマカロフの判断に身を委ねる。
マカロフはそんなワタルを見ると、微かに微笑んだ。
「そうじゃな……なら、このギルドに入りなさい」
「ッ、本気ですか? 俺を……星族の末裔をギルドに入れる意味、マスターのあなたなら分かるはずです。なのに、何故……?」
ワタルはまさか、と目を見開くと、マカロフに理由を聞く。
旅の途中、街の中で誤って星の刺青を見られてしまった事をワタルは思い出した。その街に解除魔導士が探し物の依頼で訪れていて、不幸にもその魔導士が偶然ワタルの隠蔽魔法を解除してしまったのが理由なのだがこの際それはいい。
露呈した結果、人殺しと悲鳴を上げられ、家族を返せと罵倒を浴びせられ、出て行けと石を投げられた。これまで知識でしか知らなかった大衆が星族に抱く恐怖をその身で知り、誰かに心を許す事も頼る事も出来ずに孤独に押し潰されそうになりながら、旅をするしかなかったのだ。
驚愕の理由はそこにある。集団が自分を受け入れるということは、彼にとって信じ難い事だったのだ。
「ギルドとは、身寄りの無いガキにとっては家みたいなものじゃ。このギルドにも何人かそういう奴がおる。そして、妖精の尻尾はそれが例え悪人でも受け入れる。その者がギルドに仇なし、ギルドの仲間――家族を傷つけない限りはな……」
それに、と言ってマカロフはにやりと笑って言った。
「あのエルザという少女は随分とお前さんを慕っていたようじゃが?」
「……一目で分かる物なんですか、そういうの?」
「伊達に歳は喰ってないわい」
マカロフはそう言うと、さらに笑みを深くした。
「……分かりました。このギルドのお世話になります」
老人の浮かべた人懐っこい笑みにワタルは内心
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