暁 〜小説投稿サイト〜
リリなのinボクらの太陽サーガ
紅蓮
[1/10]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
失われていく……世界から思いを交わす言語が。消えていく……文明を形作るにあたって、なくてはならない言葉が。奪われていく……母語によって構成されていた記憶が。

これが、母語喪失の感覚……! 言語吸収で英語やミッド語を失った場合、即座にロシア語に修正するよう俺達は事前に示し合わせている。それも失ったら次はドイツ語、ロシア語、中国語と切り替えていく事で、言語吸収を数回されても何とか耐えられるように学んできた。ただ……言語吸収をされると頭の中を直にかき回されるような気持ちの悪い感覚があり、その影響でとてつもない虚脱感と頭痛、言いようのない吐き気を催した。

「クッ……まるで風邪やインフルエンザにかかったようで辛いな……!」

[私達が必死に勉強してきた知識、それを奪われるというのは気分が悪いですね……!]

[あぁー!? せっかく覚えた単語がぁー!? ボクの努力かえしてよぉ〜!]

[むぅ……これほど嫌な感覚は今まで感じた事が無い。生半可な精神攻撃よりはるかに性質が悪い……!]

[サバタさんと同化したおかげで、私達の身体を構成するプログラムは何とか守れました。でも……]

俺と同化した領域の中で、ユーリが辛そうに言葉を言いよどむ。彼女と同じ気持ちを抱く俺やシュテル達も、俺の視界と共有しながら、この惨状を目の当たりにして厳しい表情を浮かべる。

ファーヴニルの角の発光が収まって、ミッドチルダから多くの言語が吸収され終わった後、俺は黒いオーラの守りを解放して辺りを視認した。そしてすぐ息を呑んだ。以前エレンが伝えたように、そこら中で魔導師、騎士、市民が関係なく全員“退行”してしまった目も当てられない光景が広がっていたためだ。

先程まで聞こえていたはずの、シャロンの月詠幻歌すらも止まってしまっている。しかしシャロンとマキナは俺達と同様にロシア語を含めた複数の言語を身に着けているから、少なくとも“退行”はしていないはずだ。問題は……今回歌われていた月詠幻歌はいつもと違って英語ではなくシャロンなりに解釈した古代語で歌われていたのだが、もしかしたらその古代語を吸収されてしまった可能性がある事だ。そうなれば再びファーヴニルを封印出来ない状況に戻ってしまう事を意味する。つまり俺達が勝利するには、失った言語を取り戻さなくてはならない訳だ。

魔方陣を展開して俺はマテ娘とユーリを再召喚、実体化させてどうにか戦力を整える。だがさっきまで大勢いた味方が一瞬で無力化、人形も同然の状態となって転がっている現状は、色んな意味でこちらの不利になっている。例えばファーヴニルが進攻を再開した場合、普通ならその巨体に押し潰されない様に逃げたりするものなのだが、今の彼らはその意識すらも抱いてくれない。危険を前にしても動かないせいで戦闘に巻き込まれやすくなり、俺達
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ