麒麟を封じるイト
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点。
――お前が華琳を倒す為の……“赤壁の戦い”なんざ絶対に起こさせねぇから、お前は大人しくあの子と幸せになってろ……黒麒麟。
逆に赤壁で曹操を勝たせればいいだろう、と彼は考えない。
記憶の問題がある以上、僅かな可能性であれど排除し、華琳が黒麒麟を留めて置ける環境を作り上げることこそが最善。
事前準備の段階から手を抜かない。抜くはずがない。
あの子が笑顔である為に。あの子に幸せを与える為に。それだけが彼の行動理由なのだから。
自分が黒麒麟のままであると思わせることが出来れば、それだけで策の幅が広がるというモノ。
ただ、演じるのは骨が折れる。なんせ、彼女達に絶対にバレてはならないのだ。その為には詠の協力が不可欠。
纏わりつく鈴々をひょいと抱き上げて視線を逸らし頭を撫でながら、困ったような顔を浮かべた彼は詠を見やった。
二人だけが緩い空気に呑まれていない。溶け込んでいるように見えても、瞳の奥の冷たさだけはそのままだった。
「鈴々、そろそろ離れてくれない? ボクも秋斗も暇じゃないのよ」
「いやなのだ……あ、誰かと思ったら詠だったのか。久しぶりなのだ!」
「うん、久しぶり。でも失礼ね。ちょっと服が変わっただけじゃない」
助け舟を出そうと語り掛け、敢えて鈴々の真名を呼び、彼女が真名を呼んでも咎めない。
愛紗や桃香の目に疑念と哀しみが浮かぶ。義姉妹三人を同じ扱いにはしない詠の線引きを、彼女達二人も読み取っていた。
聡く気付いたモノは鈴々以外。詠の対応と桃香達の反応を、秋斗に後ろから抱えられるカタチの鈴々以外はおぼろげながらも理解する。
これで劉備軍独特の空気は打ち砕いた。あとは徐々に話を変えればいいだけ。
「そんな帽子の服着てるからくるくるのお姉ちゃんとこのネコミミのお姉ちゃんかと思って……」
「ふふ、冗談よ、気にしてないわ。それよりちゃんとあんたの場所に行きなさいね? このままで居るんだったらボク達仕事出来ないし帰るしかなくなっちゃう」
「むぅ……それも嫌なのだ」
「ちゃんとしてたら後で時間取れるかもよ?」
「なら戻るのだ! お兄ちゃん、またあとで!」
ててっと駆けて行く鈴々。それに倣って、劉備軍の面々も漸く動き出した。
こういった誘導はいつもなら得意なはずの彼だが、どうやらまだ黒麒麟になり切れないらしく。目礼一つで感謝を伝える秋斗に、貸し一つよと詠は鼻を鳴らした。
桃香が上座に座ると同時、両隣には愛紗と鈴々を、次に星と藍々、紫苑に厳顔、最後に焔耶が立ち並ぶ。
「では……」
声を出したのは彼だった。やっと彼女達をちゃんと見た彼の顔には、不敵な笑みだけがあった。
「お初の方々は初めまして、旧知の方々は久方ぶりです。知らぬ方が居られると思い
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