麒麟を封じるイト
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を得なくなった。
今はいい。後で絶対に聞き出してやると心に決めて、詠はイヌミミフードを揺らして振り返る。
其処には錚々たる面々が居並んでいた。
美髪公と謳われる軍神は先ほどの狼狽ぶりからは打って変わって引き締まった表情を浮かべ。
艶やかな青い髪を棚引かせる昇龍は飄々と微笑みながらも気を抜くことはなく。
紫髪たおやかで母性の象徴を揺らす妙齢の女は、なるほど武人と言わざるを得ない気配を放ち。
銀色の髪と切れ長の目を持つ美女は、実に楽しそうに敵と思われる黒をじっと見据え。
離れた位置には先程のオレンジメッシュの女も、何か言われたらしくしゃんと背筋を伸ばして控えている。
詠よりも少しばかり背の高い藍色の髪の乙女にあるは知性の鋭さ、随分と見慣れた水鏡塾の衣服を着こなす姿は智者の証明。
その中心。その真ん中には……桃色の、柔らかい覇気を纏った王がゆったりと立っていた。
豪華な人員での対処に少しばかり驚きつつも、詠が気圧されることは無い。
――……前よりは随分とマシになった。
緊張しているのは分かる。瞳の奥底に怯えも見受けられる。それでも纏う覇気は王以外の何物でもなくて、他の者なら圧倒されていただろうなと思った。
――でも、魏の五大将と六軍師が並んだだけの方が威圧感あるわね、これじゃ。
しかれども、王が中心に立っていても感じられない“格”があった。
経験と信頼、自信と自負によって磨き上げられてきた“格”が。
何も言葉を発さず、詠は立ち上がってお辞儀を一つ。座ってからが本番だと無言で示した。
反して、彼は立ち上がることすらしなかった。振り向くことすらしなかった。礼を失した行いなのは明らかであるのに、である。
あぐらを掻いたまま何も言わず動かない。詠は咎めようと口を開きかけるも……一つの影が動いたことで噤むしかなかった。
「おっかえりーなのだ!」
「うぉっ」
駆ける速度は並の人間では出せぬ程。小さな体躯に赤髪を揺らして、その少女――鈴々は黒の背中に思いっ切り抱きついた。
「……お兄ちゃん、久しぶり!」
「……ちょっとは場を弁えろ」
「知ったことかぁなのだ!」
首を回して見てみれば、顔と顔が触れ合う程の距離で笑顔の華を咲かせる鈴々。
咎めるもニコニコと上機嫌に返し、全く離れるそぶりさえ見せない。
仲のいい兄妹とも思える二人の様子に、微笑ましく頬を綻ばせたのは桃香と紫苑。ずっと何処か影があった鈴々に昔のような笑顔が戻った、桃香にはそれが嬉しかった。
紫苑については、初めて見る甘えた姿に驚きつつも、自分の娘と身長が変わらない鈴々の見た目相応な様子に、子を見守る母の視線を向けている。
「ちゃんとした場を組んだというのに……今は我慢しろ、鈴
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