第167話 襄陽城攻め前夜2
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したしたままだったが彼女は緊張した様子だった。甘寧は正宗の意図が読めない様子だった。
「それでお許し願えるのでしょうか?」
甘寧は躊躇するも固い声で正宗に訊ねた。彼女はどうしても正宗から免罪を引き出したいようだ。正宗は目を細め甘寧を凝視した。
「孫文台の罪を不問にすること約束する」
正宗は神妙な表情でゆっくりと答えた。
「お受けいたします」
甘寧は逡巡するも平伏したまま固い声で正宗の条件に応じた。正宗は甘寧の返事を聞くと溜息をついた。その様子を見ていた泉は安堵の溜息をついた。正宗が甘寧を本気で妾にする気がないことを理解したのだろう。
「甘興覇、そこまでして孫文台に何故義理立てするのだ?」
正宗はしばし甘寧を様子を窺った後に口を開いた。
「私のような者を拾って貰った恩があります」
甘寧は淡々と答えた。正宗は聞き終わると瞑目した後、しばらくして再び溜息を着いた。
「止めだ! 止めだ!」
正宗はいきなり投げやりな大きな声を上げた。泉も甘寧も驚いて正宗のことを見た。
「甘興覇、お前の覚悟は十分に分かった。先ほどの話は無しだ。身を差し出さずともいい」
正宗は甘寧を労わるような表情に変わると言った。
「お前の忠義に免じて孫文台の件は不問にしてやる。その褒美は受け取って置け」
正宗は笑みを浮かべ甘寧の面前に置かれた台座の上にある布袋に視線を向けた。
「ですが」
正宗の言葉に戸惑っている甘寧を正宗が制止した。
「余に恥をかかすな。褒美として一度出した物を返せと言っては余の立つ手がない。それはお前の忠義を報償するものだ」
正宗が「さっさと受け取れ!」と手仕草をするのを見て甘寧は台座の上の布袋をしばし凝視した後受け取った。
「甘興覇、お前の主人の罪を見逃す代わり余と約束せよ。今日あったことは他言無用ぞ。孫文台は勿論のこと孫仲謀にも言ってはならん。お前は真実を語らず褒美を受け取った。よいな? 約束できるか?」
正宗は甘寧に優しい声音で言った。彼は甘寧のことを思って告白した事実を無かったことにしようとしているのだろう。
「有り難いお言葉ですが文台様に顔向けできません」
甘寧は気落ちした声で正宗に言った。彼女の中では孫堅の元を去ろうと考えているように見えた。
「主人のためを思ってのことだろう。ならば今日のことは忘れよ。そして、明日からは主人のために尽くせ。これより襄陽城攻めが控えている。お前は孫家を見捨てるつもりか?」
正宗は甘寧を諭した。甘寧は黙って正宗の話を聞いていた。
「お前が孫文台の元に戻らんというなら、このこと露見させることになるぞ。それでもいいのか? 孫文台は面目を失い荊州の豪族達の笑い
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