第167話 襄陽城攻め前夜2
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前一人が罰を受ければ丸く収まると考えたか?」
正宗の言葉に甘寧は頷いた。正宗は一瞬目を細めるも直ぐに元に戻した。
「余が孫文台に敵意をいただいている場合を考えなかったのか?」
正宗は甘寧に聞いた。甘寧は即答せず沈黙した。
「その可能性もございますが清河王は筋目を通せば寛大な対応をしてくださると思っております」
「筋目を通すなら、筋を通すはお前ではなく孫文台の方であろう。違うか?」
「そのこと平にご容赦の程お願いいたします。孫文台様が追うべき罪を私が負います」
甘寧は平伏の体勢のまま額を地面に擦りつけ必死に許しを請う。その姿を正宗はしばし凝視していた。
「孫文台が追うべき罪をお前が背負えるわけがないだろう。太守と有象無象のお前では立場が違う。お前に負えるものではない」
正宗は厳粛な態度で厳かに答えた。
「そこを伏してお願いいたします。どのような罰でも私がお受けいたします」
「ここまで余を虚仮にするとは孫文台の評価は修正せねばならないな」
「そこを伏してお願いいたします」
甘寧は正宗に対しひたすら額を地面に擦りつけ許しを請う。
「甘興覇、どんな罰でも受ける覚悟があるというのだな」
正宗は甘寧に対して怒っている様子はなかった。
「はい」
甘寧は低い声で正宗に返事した。その態度から覚悟はしていることは正宗にも泉にも理解できた。だが泉はそれでも怒りが収まらない様子だった。
「甘興覇、孫文台の元を去り私に仕官しろ」
甘寧は顔を上げ驚いた表情で正宗を見た。正宗は神妙な表情で甘寧を見ていた。
「もう一度言う。甘興覇、孫文台の元を去り私に仕官しろ。それでお前の主人の罪を聞かなかったことにする」
「申し訳ございません。お受けできません」
甘寧は平伏したまま正宗の申し出を澱みなく拒否した。その声音から強い意志を感じられた。
「どんな罰でも受ける覚悟があると言ったのは偽りか?」
「滅相もございません」
「では私に仕官しろ」
甘寧は正宗に何か言いたそうだったが口を噤んだ。ここで正宗に意見することは彼女にとっても孫堅にとっても良い結果を招かないと感じたのだろう。正宗は平伏する甘寧を凝視した。
「孫文台に忠義立てのつもりかもしれないが、お前は既に主人を裏切っているということを自覚しているのか。この件が漏れればお前は孫文台の元を去らねばならなくなるかもしれないぞ」
「それでも出来ません。孫文台様の元を去る覚悟で申し上げています」
甘寧は正宗の提案を拒否した。正宗は甘寧を見つめながら思案している様子だった。
「では私の女になれ」
正宗は唐突に言った。泉は両目をこれでもかと見開き驚いた表情で正宗の方を向いた。甘寧は沈黙
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