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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第167話 襄陽城攻め前夜2
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を前にして、正宗を謀ることが気が引けたのかもしれない。蔡瑁の夜襲を完膚なきまでに蹴散らした正宗軍の精強さ。それが孫堅軍に向かうやもしれない。今回の嘘が露見した場合、その可能性は十分にある。だが、理由もなくいらないとは言えず、八方ふさがりなのか甘寧の表情は曇っていた。

「甘興覇、無礼であろう。清河王からの計らいを断るつもりか?」

 泉は厳しい顔で甘寧を睨んだ。正宗は甘寧の様子を観察するような視線を送るだけで黙っていた。

「有り難くお受けいたします」

 甘寧は悩んだ末に布袋を受け取った。布袋は中身の重量で下に伸び、銭の擦る音ではなく砂が擦れるような音が聞こえた。袋の中身は砂金かもしれない。甘寧もそう感じたのか苦悩した表情を浮かべた後、その袋を台座に戻した。

「褒美をお受けすることはできません」

 甘寧は顔を上げ正宗に言った。正宗の温和な表情が一変し険しい表情に変わった。

「どういう意味だ?」

 泉は低い声で甘寧に詰問した。彼女は正宗からの褒美を拒否した甘寧の行動が許せない様子だった。

「私は確かに檄文を届けました。ですが孫文台様とはすれ違いになり、届けることが適いませんでした。孫文台様は自らの考えで南陽郡に参りました。この褒美を私が受け取ることはできません」

 正宗は甘寧の話を聞き終わる冷めた目で甘寧を見ていた。その視線は怒りを覚えているようには見えなかった。甘寧の行動を観察していて、彼女の様子が変に見えたのかもしれない。対して泉は完全に血が上っている様子だった。彼女にすれば孫堅は正宗に襲いかかった賊、そして目の前の甘寧は孫堅は嘘を正宗に報告したと証言しているのだ。正宗のことを第一に考える彼女の怒りはもっともなことだろう。

「そうか」

 正宗は低い声で短く答えた。甘寧は彼が怒りを抱いていることを感じただろう。すぐさま両膝をつけ彼に対して平伏し顔を地面につけた。

「清河王、この甘寧を罰し孫文台様の罪をお許しください! どのような罰も受けます!」

 甘寧は正宗に対し平伏したまま必死に懇願した。

「貴様が謝罪して済む話ではないわ! 正宗様は衆人にてお前に褒美を出すと公言されたのだ。それが嘘だと? お前の首一つで済むと思っているのか! 孫文台、許さんぞ!」

 泉は正宗が恥を掻いたことに立腹し甘寧のことを罵った。正宗は泉と違い冷静な表情で甘寧を見ていた。

「泉、落ち着け」
「しかし!」
「いいから落ち着け」

 正宗は泉を落ち着かせた後、甘寧を見た。

「甘興覇、どうして打ち明ける気持ちになった? 褒美を受け取り隠し通すこともできたであろう」
「隠した後に文台様に悪意を持つ者に露見した場合、文台様の身を危険に晒すかもしれないと考えました」
「ここで白状しお
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