23部分:第二十三章
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第二十三章
「私はね」
「では陛下が?」
「けれどあれは」
「実は陛下でもないんだ」
それも否定しました。実は乙女達に指輪を守るように言ったのは皇帝なのです。指輪の恐ろしい力と呪いを危険に思った結果なのです。
「じゃあ誰が?」
「誰があの指輪を欲しいと言っているの?」
「ここに一人の小人の男がやって来る」
騎士は真面目な顔で三人に述べました。
「小人!?」
「彼の名はアルベリヒ」
「アルベリヒ!?」
「あの小男が」
「やっぱり知っているんだな」
騎士は乙女達が顔色を変えたのに気付いて言いました。その顔色から彼女達がそのアルベリヒという男を嫌っているのを察しました。
「あの男が君達に言い寄りに来るんだ」
「冗談じゃないわ」
「何であんな男が」
乙女達の顔がもっと不機嫌なものになります。もう言うまでもありません。
「じゃあどうするんだい?」
「断るわ」
「やぱりね。けれどそれだとよくない結果をもたらしてしまうことになるだろう」
騎士は忠告する顔で三人に言いました。
「彼は君達に振られたらどうすると思う?」
「さあ」
「帰るしかないじゃない」
乙女達はまた言います。どうにも他人事の感じです。
「それ以外に何が?」
「他に何もないし」
「帰るのは間違いないだろうね」
騎士はそれに応えて述べます。けれどこう付け加えてきたのでした。
「ただし。手ぶらじゃない」
「手ぶらじゃないって」
「じゃあ一体何をするの?」
「そこにある指輪」
川底を指差しました。河の上からもその赤金の指輪が見えます。青い河の中で不思議な色に光るそれは一度見たら忘れられないものでした。
「その指輪を取るだろうね。おそらくは」
「そんな。あの指輪は」
乙女達は騎士の言葉を打ち消しにかかります。それは否定というよりは願望に近いものでした。今は願望を言うのでした。
「愛を捨てないと」
「さもないと私達には手に取ることすらも」
「そう、愛を捨てる」
騎士の言葉がまた鋭くなりました。
「愛を捨てて権力を得る。そうなれば」
「大変なことになるわ」
「けれど私達は」
「彼は好みではないんだね」
また彼女達に問います。
「やっぱり」
「どうしても駄目っ」
三人の言葉は完全な否定でした。もうそれはどうしようもないものでした。
「好みじゃないのよ」
「やっぱり。種族も違うし」
「そう。好みだけは仕方がない」
騎士はそんな彼女達の言葉を受け入れました。まるで最初から全てがわかっていたかのように。落ち着いた顔で言葉を進めていくのでした。
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