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大切な一つのもの
2部分:第二章
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第二章

「何とかしてあの男の顔を悔し涙で洗わせてやりたいものじゃ」
「悔し涙でですか」
「そうじゃ」
 それまで左右に控えて何も言えなかった家臣の一人が問うとそれに答えます。
「あの白髭も何もかもな。さぞかし拭くのが大変であろうな」
「それは幾ら何でも」
「子供じみていると思いますが」
「それでも構わぬ」
 しかし皇帝は家臣の言葉にも開き直るのでした。本当に子供みたいです。
「あの男をへこませられればな」
「では陛下」
 ここで金色の髪と青い目をした奇麗な若者が出て来ました。この国の宰相フレイで皇帝も彼には全幅の信頼を置いています。彼は白い服とマントを着ています。
「騎士達を集めて探させてはどうでしょうか」
「騎士達をか」
「はい」
 彼は言います。その厳かな声で。
「その大切なものとは何かを」
「ふむ」
 皇帝は宰相のその言葉を聞いて顎に手を当てました。そのうえで考えに入ります。
「悪くはないな」
「それでは早速」
「いや、待て」
 動こうとした宰相をまずは止めます。
「人は選んだ方がいいな。ここはな」
「それでは一体誰を」
「やはりここは優れた者にしたい」
 皇帝は考えに耽る顔のままで言います。そうして自分の頭の中で人選をはじめるのでした。皇帝は皇帝であれこれといつも考えているのです。
「あの九人だ」
 彼は言いました。
「九人の騎士を選びたい。それでいいな」
「わかりました。それでは」
「その九人の騎士は誰でしょうか」
 宰相とフレイヤはそれが誰なのか問います。問題はそこです。
「決まっているではないか、彼等だ」
 皇帝は笑って二人に言います。
「我が帝国の誇る彼等だ。これだけ言えばわかるな」
「成程」
 宰相にもその九人の騎士が誰かなのかわかりました。それで満足して微笑みます。
「彼等ですね」
「左様、では呼ぶがいい」
「はっ」
 こうして九人の騎士が呼ばれることになりました。見ればそれぞれ鎧もマントも違った麗しい姿の騎士達が皇帝の前に跪いたのでありました。
 まずは黄色い鎧とマントの騎士が。歌を得意とする歌の騎士ヴァルターであります。
 次に紫の鎧とマントの騎士。竪琴を奏でる琴の騎士タンホイザーです。
 三番目は白い鎧とマントの騎士です。白鳥の紋章で飾っている鳥の騎士ローエングリンです。
 その後は緑の鎧とマントの騎士がいます。森の中で力を得る森の騎士トリスタンです。
 五人目は橙色の鎧とマントを着ています。かつて教皇のいる南の都を護った都の騎士リェンツィです。
 その隣にいるのは赤い鎧とマントの騎士です。頭がいいので有名な炎の騎士ローゲです。
 七人目の騎士は茶色の鎧とマントです。狼と共に育った狼の騎士ジークムントです。
 そうして八番目の騎
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