19部分:第十九章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十九章
「どうして私がここにいるのか知りたいのだな」
「そうです。どうして」
「そなたに褒美を与える為だ」
こう騎士に告げてきました。
「褒美ですか」
「話は聞いている」
また騎士に告げます。
「皇帝陛下からこの世で最も大切なものを探し出して来いと言われているな」
「その通りです。では」
「おそらくは間違いはあるまい」
王様の声と顔がしっかりしたものになります。まるで全てを察したかのように。
「よいか」
「はい」
その王様の顔と声に応えます。
「それはおそらく形になっているものではない」
「といいますと」
「だがそれと共に人が常に求めるものなのだ」
こうも告げます。告げられた騎士の顔は余計に困惑したものになりました。
「常にですか」
「それを今そなたに与えよう」
にこやかなまま言います。
「今ここでな」
「それで叔父上」
騎士は王様に対してまた問います。
「それでそれは」
「それはな」
「はい」
言葉のやり取りが次第に慎重になっていきます。王様も森の騎士も。まるで時の流れがそれだけ緩やかになったかのように。少しずつ。
「愛であろう」
「愛、ですか」
「わしはな。若い頃に妻に先立たれたな」
寂しい笑みになりました。何かを諦めたかのような。
「それは知っておろう」
「はい」
こくりと頷きます。これは彼も知っていました。御妃様を深く愛していた王様はそれからずっと結婚しなかった程なのです。
「従って子もいない。だからこそ愛の大切さを知っておるのだ」
「私に対してもですね」
「うむ」
今度は王様が頷きました。騎士に対して。
「そうじゃ。愛とは相手がいてはじめてできるもの」
「相手が」
「そなたにその相手を授けたいのじゃ」
これが王様の贈りものだったのです。それは。
「相手!?ですが」
「相手がおらんというのだな」
「その通りでございます」
頭を垂れて王様に申し上げます。実は森の騎士はまだ結婚していません。実はこれは他の騎士達も同じだったりします。
「残念ですが」
「だからこそじゃ」
王様はまた顔を綻ばせてきました。甥の顔を見ながら。
「トリスタン」
「はい」
今度は甥の名前を呼びました。
「そなたはずっと一人じゃった。そのそなたの妻となる者は」
「妻となるのは」
「もうここに来ておるのじゃ」
「ここにですか」
「うむ」
そのにこやかな顔でまた騎士に対して頷きます。
「西の島の王女じゃ」
「何っ!?」
「何とっ」
これに驚いたのは騎士だけではありません。そこにいた全ての者がそうでした。それ程までに王様の今の言葉は驚くべきものだったのです。
「どうじゃ、よいじゃろう」
「私が王女の」
「左様。西の島
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ