月下に咲く薔薇 19.
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どのような結果になるのか。当然、相応の興味はある。『揺れる天秤』の力と異物の相性。面白い事になる気配もあるが、逆に食われてしまっては元も子もない。
怪植物の吸収限界が見えていない今、指揮官達にとってSPIGOTによる攻撃は是非とも試してみたい妙手であると同時に、禁じ手としたい技でもある。
種という心配はなさそうな体内の異物。クロウは、再接触の際にその正体についても是非尋ねてみたかった。
「ところで、ミシェル」万丈が、敢えてミシェルに声をかける。「僕は、ずっと疑問に思っているんだが。連れ去られた顔ぶれは、どうしてクランと中原さんの2人になったんだろう? 君に心当たりはあるのか? 1本目のバラを贈られた相手は君と聞いている」
「それなんですが…」ミシェルが昨日1日を回顧する。その表情は真剣そのもので、元々彼の中に同じ疑問が内在していた事を周囲に告示した。「俺もずっと疑問には思っているんです。もし、パイロットとしての高い能力を取り込みたいのなら、スナイパーとしての俺は今ここにはいないでしょう。それに、無理矢理異界に引きずり込んでしまえばいい。次元獣やクロウの時のように。…ケンジ隊長も言っていましたが、俺もあの人に同感です。何か全く別の動機があると考えるべきです」
「そう。確かに2人の女性だけが異質なんだ」万丈はその場で立ち上がり、皆の注目を敢えて引き寄せた。「次元獣、Dフォルト、異世界、アイム、クロウ、現れては消えるバラ。転写される月。これらには、何となく共通したものが見えてくるじゃないか」
「ああ、何となく」話題のクロウがにっと笑い、「こう上手くは言えないんだがな」と両手でそれぞれ半球を描きくるくると胸元で捻った。球は、核心の外周に集まっている敵の残したヒント全てを括っている。
勿論、クロウの名が同列に加わってしまう事実は余り嬉しいものではない。
万丈が続ける。
「昨夜から僕も、バラの事が少し気にはなっていたんだ。クロウとアイムにも絡んでいるようだが、元はミシェルとアテナに贈られたところから始まっている。もし仮に、敵がシンフォニーを名乗る相手だとしたら、あの2人にはクロウやアイムと同じ力など無い事は既に察知している筈なんだ。当然、ミシェルとアテナについても。なのに、連れ去られる対象はあの2人になった。理由は、もしかしたら全然違うところにあるんじゃないのか? 例えば、昨日1日の行動の中とか。2人は、昨日ほとんど一緒だったんだろう?」
「はい」
「それ、実に興味深い話だね」と、突然大杉が割り込んだ。「もし、2本目のバラを贈られたアテナがそのまま連れて行かれたら、今の疑問は生まれていないかもしれない。アイムは、アサキムとZEUTHのメンバーを『呪われし放浪者』と呼んでいる。アサキム自身も、自分についてそう話していた。『放浪者』は次元の跳躍
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